【日本オラクル社×アシスト社×パーソルキャリア 特別インタビュー】Exadata移行プロジェクトから見るITインフラのあり方

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これまでパーソルキャリアのインフラ環境はオンプレミス環境が中心でしたが、組織のアジリティを高めるべくクラウド移行プロジェクトを実施。2021年4月より、クラウドとのハイブリット環境が構築されました。

これまでもその軌跡を取材してきましたが、今回は実際にクラウド移行にご協力をいただいた日本オラクル朝倉様、アシスト川合様・伊東様をお招きして、パーソルキャリアのプロジェクト担当者である佐藤とともにインタビュー。本プロジェクトを通じて見えた、パーソルキャリア“ならでは”の課題や考え方をお聞きしました。

 

 

前例のないプロジェクト成功の秘訣は、事前検証の徹底と密なコミュニケーション

 

――まずは、今回のクラウド移行における各社の役割から教えてください。日本オラクル様、アシスト様からは、それぞれどのようなフェーズでご支援をいただいたのでしょうか。

佐藤:プロジェクトスタート後、まずはオラクルさんにご協力いただいて机上の事前検証を行い、構成の検討を進めました。その後、大まかな方向性が決まった段階でアシストさんにご相談し、具体的にどのように実現していくかといった方法の検討や設計、実際のオラクルクラウド環境の構築、データの移行などにご協力いただいた形です。

また移行を進める中で、疑問点があった時にはオラクルさんにも質問させていただき、サービスの範囲外でありながら手厚いサポートをいただいて、クラウド移行を完了させることができました。

 

――今回、従来のオンプレミス中心の環境から、クラウドとのハイブリッドな環境へ移行をされたと伺っていますが、このような構成はどのような経緯で選択されたのでしょうか。

朝倉:当初、パーソルキャリア様の基幹システムの本番環境はパーソルグループ共通のオンプレミス環境 “Exadata” で動いていましたが、そのEOSLが近づいてきたのを機に、次のプラットフォームをどうしようかとご相談いただくようになりました。

考えられる選択肢は、

  1. そのままオンプレミスの最新機種に乗り移ること
  2. 開発環境で使っている “Oracle Exadata Cloud@Customer”(以下、ExaCC)を使うこと
  3. パブリッククラウド “Oracle Exadata Cloud Service”(以下、ExaCS)を使うこと

の三つ。ここから検討を進める中で、いきなり全面的にパブリック環境を使うことのリスクを考え、「開発利用のExaCCを本番環境に格上げし、パブリック環境のExaCSをスタンバイ環境や検証開発に使う」というハイブリッドの方針が濃厚になっていきました。

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パーソルキャリア様にとって大切な、止めてはいけない基幹業務のシステムですし、セキュリティも確実に担保しなければいけません。しかもお客様にとってハイブリッドな使い方ははじめてなため、チャレンジな試みでした。

そこで、実際に構築をされる前に弊社のコンサルティングサービスをご利用いただき、実現性を検討するディスカッションスタディーを数ヶ月にわたって実施しながら、慎重に検討を進めていきました。 

日本オラクル株式会社 朝倉 様

日本オラクル株式会社 朝倉 將仁 氏

 

――日本オラクル様にとってもなかなか馴染みのない構成だったということですが、アシスト様としては、この方針を聞かれた時の印象はいかがでしたか? 

川合:ExaCC,ExaCSそれぞれの構築実績はあるものの、今回の構成は当社としても初めて実施するものだったので、大前提として、スケジュールを確実に守って設計や作業を進めることを強く意識しました。社内での事前調査を丁寧に行い、スケジュールに影響するようなリスク項目の精査などは特に時間をかけて対応したことが、印象に残っています。

実際の設計・構築などに関しては、初めてのパターンであるが故のトラブルやエラーなどは起きず、スムーズに作業を進めることができました。

一点だけ、様々な前提条件や仕様との兼ね合いで想定通りに実現できなかったものがありましたが、佐藤さんにすぐにご相談して代替案を検討し、スケジュールには大きな影響なく終えることができたかなと振り返ります。

 

――想定外のトラブルなく終えられたのは、何が功を奏したのでしょうか?お考えになる要因などあれば教えてください。

川合:まずは、オラクルクラウドは設定が簡素化されているため、ミスがほとんど発生しなかったというのが一つありますね。

 

佐藤:そうですね。後は川合さんたちと早めにコミュニケーションをとって「こういう構成にしたい」など案ベースでご相談していたことで、事前にしっかりと検証していただけたのが大きいかなと思います。

 

伊東:私は設計や構築、データ移行などの実作業を担当させていただきましたが、確かに前もって検証できる余裕がありましたし、移行準備にもきっちり時間をかけさせてもらったので、パーソルキャリア様の環境で実際に作業する際にエラーなどの事象が起きず、スムーズでしたね。

 

川合:構成に限ったお話ではなく、前もって「こういうことをしたい」というお話をいただけるので、「当社にそういうことを期待されていたのか」と後から気づくことがほとんどなかったんですよね。その期待に応えるための事前準備がしっかりできたのは大きかったと思います。

 

佐藤:ただ一点だけ、移行が予定日の「0時から」なのか「24時から」なのかで認識の齟齬が起きてしまい、2週間くらい前に「違います、前日です」とあたふたしてしまったのが申し訳なかったです……。

 

川合:その時は人の調整に時間がかかってしまい申し訳ありませんでしたが(笑)、その他はうまく連携できていたので良かったと思います。

 

株式会社アシスト 川合 裕太 氏

株式会社アシスト 川合 裕太 氏

――細かな事はありつつも、早め早めの相談で着実に進めることができたのですね。佐藤さんとしては、このようにコミュニケーションをしっかりととって細部を詰めて進めていこう、という理想をお持ちだったのでしょうか。

佐藤:理想はもちろんありました。ただベースにあったのは、理想をしっかり考えてやった上で、想定外が起きるのは仕方がないという割り切りですね。本音としては不安で不安で仕方がないけれど、やるしかないですから、何かあったら「ごめんなさい」しようと覚悟を決めてまして、川合さんたちにも、念の為翌日は待機時間を作っていただいていたんです。実際は、想定していた時間よりもずっと早く作業が終わって、むしろ拍子抜けするような感覚でしたが(笑)。

 

求められるのは、互いに本音で語り、頼るべきところは頼ること 

 

――今回の連携の中で見えた、パーソルキャリアの印象をお聞かせください。朝倉様はいかがでしたか?

朝倉:佐藤さんのチームは、データベースのコンサルティングやシステムの設計開発などの経験をお持ちの方など、少数ではありながら精鋭のメンバーばかりですよね。実現性を検証する中でも「ここって大丈夫なの?」という確認すべきポイントを押さえられていて、そこをきちんと質問していただき当社でチェックする、という段階を踏んでいるので、その後の実機での検証もうまく進むという印象です。

ここを「お金がかかるから自分たちでやります」としてしまうと、後でうまく進まなくなってからコンサルに相談せざる得なくなってしまいますから。

そういった意味では、「社内でできるところ」「ベンダーに聞いて確実性を担保した方がいいところ」「アシストさんに手を動かしてもらうべきところ」を見極めて適切なところに投資する、という切り分けが上手ですね。平たくいうと、ベンダーとの協業が上手いと感じています。

そうして必要な箇所で頼っていただけるおかげで、当社のコンサルもやりがいがあるでしょうし、その分こちらからしっかりとコミットさせていただくので、パーソルキャリア様としても安心してプロジェクトを進めていただけたのではと思いますね。

 

――プロジェクトの前工程にしっかりと力を入れられるのは、異なる立場の方との協業を経験されてきたパーソルキャリアのIT部門ならではのお作法なのかもしれませんね。アシスト様としてはいかがですか?

川合:まずは朝倉さんのお言葉にもあった通り、一人ひとりが知識・経験豊富なプロフェッショナル、という印象です。1から10までをご説明しなくとも、同じ前提認識のもと「では、どうしていこうか」と決めるべきことだけにフォーカスしてお打ち合わせができるので、設計を主体的に進める立場として進めやすさを感じます。

 

伊東:その点はやはり、作業者としてもやりやすいです。「社内でこう言っているから、そっちでなんとかして」と投げるのではなく、社内調整までしっかりしていただけるのもありがたいですね。

 

川合:後は、一人ひとりがしっかりと裁量権を持たれているなという印象もあります。佐藤さんに何かをお尋ねすると、yesかnoがちゃんと返ってくるので進めやすいです。

株式会社アシスト 伊東 清音 氏

株式会社アシスト 伊東 清音 氏

――スピーディなクラウド移行が叶った要因が随所にあるようですね。一方で、難しさを感じたポイントや課題などがあれば、率直にお聞かせください。

伊東:移行する際にはデータの持ち方や構成を意識しますし、その中で「インデックスの貼り方が……」「データが多いから圧縮しなければ……」など、もちろん課題もあります。

ただ、その課題を佐藤さんたちがきちんと理解されて私たちにも共有してくださった上で、その解決策の提案としてご依頼をくださるので、問題なく進めてこられたのかなと思っています。

 

佐藤:問題だと思うところはたくさんあって、私どもから色々と相談しすぎているくらいですよね(笑)。「これはやっぱりできないですよね?」と無茶な相談もたくさんしているので、アシストさんとしても「それはさすがに無理ですよ」みたいなことも遠慮なく言ってくださることもあります。

 

川合:「技術的にはできるけれど、リスクもあるのでそれはさすがにやめましょう」みたいなことも、失礼ながら何度か正直に言わせていただきましたね(笑)。本当はお断りするのはあまり良くないですし、進めていく中でご説明しづらいこともやはり出てはくるのですが……ただパーソルキャリア様から良いことも悪いことも含めて情報をオープンにしていただけているので、こちらからもご相談しやすかったなと思います。

 

――お互いにプラスもマイナスも言葉にできる、素敵なコンビネーションですね。

 

ITインフラを事業推進のために――

 

――ここからは、今後に向けたお話を伺っていきたいと思います。今回の連携でよかった点や課題を踏まえて、展望をお聞かせください。

朝倉:まずはやはり、従来のオンプレミス環境からExaCCにパーソルキャリア様の基幹業務をきっちり移行し、本番環境として動かしていただけていることが、今回一番よかったと思っています。

ただ、パーソルグループの中で各個社がそれぞれのデータを持っていて、統合したくとも個々に法律やポリシーがあって難しいという状況なのかなと推測していますが……そうした状況の中で、横の連携に時間がかかる点が課題かなと捉えています。そこを改善できるとさらにグループ経営に寄与するデータ活用促進につながると思うので、今後は日本オラクルとしてそのお手伝いもさせていただけたら嬉しいですね。

 

伊東:実際に手を動かす以前から一貫して、佐藤さんをはじめとした皆さんとコミュニケーションをとり、密に連携できたところがよかったと思うので、今後も同じように進めていきたいです。

 

川合:まずは4月にカットオーバーしてから今日に至るまで、大きなトラブルなくシステム稼働してこられたのが何よりもよかったです。本番移行前は私も相当緊張していて、神社に行って「無事カットオーバーして、その後も何の問題も起きませんように」とお祈りしていたほどです。

また今回は「まずはクラウドに持っていく」というところが主題でしたが、今後はより運用を楽にすることや、属人化しないよう誰でも運用できる仕組みを作っていくことが課題になると思うので、そういった取り組みを通してクラウド活用を進めていけたらと思いますし、継続的にご協力させていただきたいですね。

 

――佐藤さんからもお願いいたします。

佐藤:最初にオラクルさんにご協力いただいて地固めをして、その上にしっかりとした家を建てる作業をアシストさんに行っていただいて、お互いにうまくいったのが本当によかったなと振り返ります。

今後も「自分たちでやれるところはやる」「お願いすべきところはお願いする」という形で、適切な形でのクラウド活用を推進していきたいと思うので、引き続きお力をお借りできれば嬉しいです。

 

パーソルキャリア株式会社 シニアコンサルタント 佐藤 隆一

パーソルキャリア株式会社 シニアコンサルタント 佐藤 隆一

――今後もインフラの整備に向けたパーソルキャリアの歩みは続いていきます。最後に、パーソルキャリアのインフラの今後へ向けたご提言も含め、事業会社におけるインフラのあり方についてのお考えをそれぞれお聞かせいただけますでしょうか。

朝倉:今は、ITのインフラが経営の足枷になってしまうケースが少なくありません。例えば古いシステムを土台にしていることに起因して、クラウド化して刷新したいけれどうまくいかず、実態として運用保守に8割くらい労力を使ってしまっているような企業もあります。

ただパーソルキャリア様の良いところとして、IT・テクノロジーを全面的に推進し、それを事業に還元して成り立っているところがあると思うんです。そのために知見があって感度が高いエンジニア人材を集められていますし、佐藤さんのお仕事を拝見していると、やりたいことを伸び伸びやれる環境もあるようにお見受けしています。

せっかくそういった土台があるので、今後もITの要素が事業を前進させるための「道具」であれればいいと思いますし、その道具が経営環境の変化やサービス開発にすぐさま適応できるように、弊社としてもインフラ環境やサービスのご提供をしていければと思います。

 

――ありがとうございます。アシスト様からもお願いいたします。

伊東:先ほども少数精鋭というお話がありましたが、やはり事業会社内のインフラ部隊は人数も少ないため、できることに限りがあります。なので、少しでも楽にできるところは省力化して、割くべきところには人員を割いて、という方針で引き続き進めていただくのがいいのかなと思います。

当社でも運用後のご支援メニューを多数用意しておりますので、困ったことがありましたら気軽にご相談をいただけると嬉しいです。

川合:特にパーソルキャリア様は常に新しいことにチャレンジされる会社で、今回の移行に満足せず「今のクラウドのあり方を、今後どう良くしていくか」をすでに検討されていますから、ぜひご協力できればと思っています。引き続きよろしくお願いいたします。

――改めて皆様からの多大なるご協力が合って、クラウド移行が成功したことを理解しました。本日はありがとうございました!

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈)

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朝倉 將仁 Masahito Asakura

日本オラクル株式会社 システム事業統括 ES/SS営業本部 流通営業部

2011年日本オラクルに入社。Oracle Exadata Database Machineを中心としたエンタープライズ向けシステムのプリセールスを担当。2019年よりクラウド営業として, Oracle Cloud Infrastructureや、マルチクラウド、ハイブリットクラウドの提案を推進、2021年よりシステム事業統括にて営業担当としてExadata,ExaCCの提案活動に従事。

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川合 裕太 Yuta Kawai

株式会社アシスト クラウド技術本部技術統括部 クラウド技術部 1課

2013年にアシストに新卒入社。Oracle Exadata Database Machineを中心としたプロジェクトリーダーを複数経験し、現在はクラウド(Oracle Cloud、Amazon Web Services)のフィールドエンジニアとして活動している。

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伊東 清音 Sayane Ito

株式会社アシスト クラウド技術本部技術統括部 クラウド技術部 1課

2012年にアシストに新卒入社。OracleDatabaseを中心とした技術支援と提案活動を担当。アシストにてOracle Cloudの取り扱い開始と同時にクラウドの技術支援と提案活動のチームへ移籍後、現在はマルチクラウド(Oracle Cloud、Amazon Web Services)へ幅を広げて活動中。

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佐藤隆一 Ryuichi Sato

インフラ基盤統括部 システム基盤部 IT基盤BITAグループシニアコンサルタント

2012年にパーソルキャリアに中途入社。インフラエンジニアとして経験後、2015年10月にパーソルホールディングス、グループIT本部に異動。グループ各社が展開する基幹データベースをExadataに統合するプロジェクトにも参画。2018年10月に帰任し、現在に至る。

※2021年7月現在の情報です。

*1:OracleとJavaは、Oracle Corporationおよびその子会社、関連会社の米国およびその他の国における登録商標です。文中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標である場合があります。