
(注記:本検証は、社内環境で利用可能なAIサービスに限定して実施しています。ChatGPTやClaudeなど、一部のサービスは検証対象外ですが、今後環境が整備され次第、実用性の検証を進める予定です。)
はじめに
デザインや企画などのクリエイティブな業務で、AIを企業のナレッジ(ドキュメント、プロジェクト管理データなど)と連携させる際、2025年〜2026年初頭における「利用者のワークフロー」に最も適したAIサービスタイプは何か。その検証結果をまとめました。
調査の目的と背景
AIツールは近年多機能化していますが、その多くはエンジニア向けのCLI(コマンドラインインターフェース)操作を前提としています。そのため、デザイナーをはじめとするクリエイティブ職に従事する方々が日常使うGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)環境で、AIがどれだけ親和性が高いかについては、まだ十分に議論されていません。
そこで、「ツールを切り替えずに、慣れ親しんだ操作感で、既存の組織データを活用できるか」をテーマに、実運用における「データへのつなぎやすさ」と「AIができること」を明らかにすることを目的としました。
検証の観点:GUI操作視点での3つの評価軸
AI活用の最適解は「AIの性能そのもの」ではなく、「既存のワークスペースをどれだけ拡張してくれるか」にある、という仮説を立てました。
デザイン担当者に限らず創造性と意思決定が求められる場面において、GUIが持つ「モードレス(操作の切り替えを意識させない)」は重要です。ツール切替やコマンド入力などによる思考の分断を避け、シームレスに試行錯誤を繰り返せる環境こそが、人間の直感や判断力を最大限に引き出す基盤になると考えています。
そのうえで使い勝手を定義するため、以下の3軸で評価を行いました。
- 連携の直感性
- 複雑なAPI設定やコードを書くことなく、URLの貼り付けやアプリ内操作だけでデータ連携が完結するか。
- 作業コンテキストの維持
- 制作画面や資料作成画面を離れることなく、情報の読み書きができるか。
- 非構造化データのハンドリング
- ドキュメントファイルやチケット情報などの非構造化データを、GUI上でいかにスムーズにアウトプット(デザイン案やテキスト)へ変換できるか。
検証対象ツールと情報源の組み合わせ
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AIサービス名 |
検証した主な連携ソース |
主な連携手法 |
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Gemini (Drive内) |
Google Sheets, Docs |
サイドパネルによるアプリ内統合 |
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Gemini Web |
Google Drive, Confluence |
URL貼付けによる参照 |
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Figma Make / Design |
Jira, Confluence, Cursor |
専用プラグイン / MCP連携 |
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Confluence Rovo |
Confluence, Google Drive |
アプリ内統合 / コネクタ連携 |
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Copilot for M365 |
SharePoint, OneDrive |
Office内参照 / 自動連携 |
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GitHub Copilot / Cursor |
GitHub, Confluence |
MCP連携 / URL貼付け |
分析・評価方法:AI連携の実用性判断基準
本検証では、各AIサービスが「クリエイティブ現場で真にワークするか」を判定するため、以下の3つのレイヤーで多角的に評価を行いました。
- 機能的達成度(Matrix Evaluation):
- 「読み込み」「既存ファイルへの書き込み」「新規生成」の3項目について、実際の社内データ(Confluenceページやスプレッドシート等)を用いて成否を判定しました。
- GUIユーザビリティ評価:
- 接続にエンジニアリング知識(APIキーの発行、プロトコル設定等)をどの程度必要とするか。
- マウス操作とURLコピー&ペーストだけで実用レベルに達するかを、デザイン担当者視点でスコアリングしました。
- コンテキスト維持率:
- AIを利用するために作業画面(Figma, Drive等)を閉じる、あるいは別タブへ移動する必要があるかを検証。思考を中断させない連携を高く評価しました。

結論から言うと
- 「今あるデータを整理したい」 なら、Google Drive内のGemini。
- 「データをデザインに落とし込みたい」 なら、Figma Make。
- 「散らばった知見を要約したい」 なら、Gemini WebやRovo。
まずは、目的と生成物をどこにアウトプットするのかをポイントに、自身のワークフローに組み込むのがよさそうです。
検証結果まとめ
AIサービスタイプ別の得意・不得意(クリエイティブ職親和性評価)
検証結果をもとに、利用者が業務特性や操作習熟度に合わせて最適なツールを選べるよう、AIサービスの特性をマトリクス(一覧表)としてまとめました。
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カテゴリ |
サービスタイプ |
GUI操作での強み・得意領域 |
課題・習得コスト |
親和性 |
|
アプリ内統合型 |
特定エコシステム内でネイティブ連携するAI |
ドキュメントやスプレッドシートを「開いたまま」で直接編集・生成が可能。学習コストが低い。 |
ファイル単位の操作に閉じ、横断的な検索には不向き。 |
★★★ |
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デザイン特化型 |
デザインプラットフォーム上で動作するAI |
プロジェクト管理ツール等のテキスト情報を、一瞬でUI要素に変換できる。制作フローの起点として最適。 |
外部エディタとの双方向連携など、特定の統合機能は未整備な場合がある。 |
★★★ |
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Web・汎用型 |
URLやプロンプトで広範な情報を参照するAI |
URLを貼るだけで、膨大な資料を瞬時に要約。参照能力は非常に高い。 |
既存ファイルへの「直接書き込み」ができず、アウトプットが限定的。 |
★★☆ |
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業務DX型 |
組織内資産を広くカバーするAI |
組織内のドキュメント作成の補助に強く、広範な社内資産をカバー。 |
外部ストレージ連携が未整備な場合がある。 |
★★☆ |
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ナレッジ管理型 |
ナレッジベースに特化し、情報抽出を強化したAI |
ナレッジドキュメントから必要な情報を引き出す速度が随一。 |
他システムとの連携に制限がある場合がある。 |
★★☆ |
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エディタ・開発型 |
開発リポジトリと深く連携するAI |
技術ドキュメントの理解力に優れ、コード生成を含む高度な機能を持つ。 |
設定に専門知識を要する場合があり、操作はキーボード中心。 |
★☆☆ |
AI連携の深さと広さ
AIサービスの種類によって、組織データへの「連携の深さ」と「対応範囲」には明確な差が見られます。
1. サービスタイプ別の特徴
- 開発特化型の優位性
- 開発リポジトリと深く連携するAIは、データの読み込み・書き込み・生成のすべてにおいて高いポテンシャルを発揮します。特に外部のプロジェクト管理ツールとの連携では、開発プロセスの大部分をカバーできます。
- エコシステム内完結型の限界と強み
- 特定のプラットフォーム内でネイティブに動作するAI(アプリ内統合型)は、そのプラットフォーム内での操作に特化し、完璧な連携を実現します。一方で、汎用WebベースAIは「読み込み」は可能でも、外部ファイルへの「直接書き込み」ができないという明確な弱点があります。
- デザイン・特定用途型の課題
- デザイン関連のAI機能は、生成や読み込みには対応しつつありますが、ツールをまたいだ既存データへの精密な書き込みには、まだ課題が残ります。
2. 情報源による連携のしやすさ
データの所在地によって、AIがアクセスできる範囲は大きく異なります。
- 連携しやすい:
- 開発リポジトリやプロジェクト管理システムのチケット情報
- これらはAPIや特定のプロトコルを介した連携が成熟しており、情報の取得から更新までスムーズに行える傾向にあります。
- 条件付き・課題あり:
- クラウドストレージ上のドキュメント(例:Google Drive、SharePoint)。
- 読み込みは比較的容易ですが、AI側からの直接的なファイル更新や新規作成には、セキュリティや権限の制約から制限がかかるケースが多く見られます。
3. 接続方法が連携の質を決定づける
接続方法が、AI連携の質を左右する重要な要因となります。
- Model Context Protocol(MCP)の強力さ
- 最新の連携プロトコルを利用することで、従来の単純なURL貼付けでは不可能だった「コンテキストを維持した双方向のやり取り」が可能になります。
- URL貼付けの限界
- 最も手軽な方法ですが、「書き込み」や「複雑な生成」には対応できず、あくまで「参照(読み込み)」に留まるケースが大半です。
- ネイティブ連携
- 特定のプラットフォーム内では最高のパフォーマンスを発揮しますが、ツールを跨いだ汎用性には欠けるというトレードオフが生じます。
活用開始点とワークフロー
AIサービスは、利用目的とワークフローによって最適な選択が異なります。
- 「今あるドキュメントやデータを整理したい」 なら、アプリ内統合型AI(プラットフォーム内で完結する機能)。
- 「組織のナレッジからデザイン要素に落とし込みたい」 なら、デザイン特化型AI。
- 「散らばった広範な知見を要約・参照したい」 なら、Web・汎用型AIやナレッジ管理型AI。
各ツールの特性は見えてきましたが、最終的に重要なのは「AIが何を生成できるか」ではなく、その出力をどう評価し、採用・編集・あるいは捨てるかを判断する人間側の「設計力」になります。
ツール選びの基準は効率化だけではなく、デザインにおける「評価と意思決定」という本来のクリエイティブな役割に集中できるよう、いかに思考を止めずにAIと対話できる環境(ワークフロー)を構築できるかが大事なポイントです。
おわりに、デザインの本質は「決断を設計すること」
今回の検証を通じて、AIとの連携は驚くほどスムーズになりつつあることが分かりました。しかし、AIがどれほど優れたアウトプットを瞬時に出したとしても、それがプロダクトの文脈に沿っているか、ユーザーの心を動かすかを見極めるのは、依然として人間の領域です。
膨大な選択肢の中から「これだ」という一本の線を引くための「評価・編集・決断」のプロセスを磨き続けること。ツールの進化が加速する今、AIの生成能力以上に「何を設計し、何を評価し、何を判断するか」という人間中心の視点こそがデザインの価値、デザイナーの価値発揮につながると考えます。

篠崎 真由美 Mayumi Shinozaki
プロダクト&マーケティング事業本部 クライアントプロダクト本部 テクノロジー統括部 クライアントプロダクトデザイン部 リードデザイナー
2022年2月入社。Web/UIUXデザインを主務に、ベンチャー企業でメディア運営や新規事業開発のクリエイティブ業務やSIerでデザイン導入支援に従事。
※2026年3月現在の情報です。
