大企業でSnowflakeをCDPとして採用した話

 

はじめに

doda ダイレクトというダイレクトソーシングサービスでプロジェクトマネジメントやデジタルトランスフォーメーション(DX)の企画・推進をしている宮澤と申します。

DXやAIの活用が進む現代において、データを統合し、活用しやすい基盤を整えることは、企業の競争力を左右する重要なテーマとなっています。

doda ダイレクトの開発組織内でも、顧客データの統合と活用を目指し、Snowflakeをカスタマーデータプラットフォーム(CDP)として導入し、積極的に活用を進めています。

今回の記事では、CDP導入の背景や今後の展望など、これからのデータ活用をどのように進めていくのか、皆様にご紹介できればと思います。

CDPとは

CDPは、顧客データを一元管理し、マーケティング活動やカスタマーエクスペリエンス(CX)を強化するためのツールと位置づけされています。

CDPは、社内に点在する様々なデータソースを収集し、統合し、分析可能な形にします。

また、現代ではよりパーソナライズされた顧客体験が求められています。

CDPは、このニーズに応えるために重要な役割を果たします。顧客の行動データや点在している顧客情報を統合することで、より効果的なCXやマーケティング体験を実現できます。

 

Snowflakeとは

Snowflakeは、クラウドベースのデータウェアハウスソリューションです。

特徴はいくつかありますが、拡張性・連携性・パフォーマンス・セキュリティなどの他方面のニーズを満たすようなソリューションです。

拡張性:状況に合わせて自在にスケールアップ・スケールアウト可能

連携性:主要なSaaSなどとのコネクタが充実している

パフォーマンス:コンピュートとストレージの分離されていることによる柔軟なスケーラビリティ

セキュリティ:柔軟な権限制御が可能

 

我々も複数のサービスを検討しましたが、データ量が非常に多いことや今後の様々な活用を見据えたときの施策の実行性などを総合的に加味して採用しました。

 

Snowflake導入背景

最も大きい背景としては、データ分析のリードタイムを短縮することが重要になってきたことです。

アジャイルな開発が当たり前になりリリースのサイクルはどんどん短くなっていく中で、その検証や企画立案のためのデータ分析スピードが遅れると顧客に最適な体験を提供するスピードも落ちてしまいます。

そんな中で我々はデータの取得やモニタリングに大きな課題を抱えていました。

 

「BIレポートを作るのに数人月かかります。」

「そのデータ抽出には数週間かかります。」

 

これでは検証サイクルが機能しないのは明らかだと思います。

そこで組織としてデータマネジメントやデータの活用を見据えた解決策を検討し、結果としてCDPの整備が必要と判断しました。

SSoT(信頼できる唯一の情報源)として顧客の情報を集約したCDPを整備していくことがデータ分析のリードタイムを短縮することで検証サイクルを高速化し、さらにはデータを活用した施策の幅を広げることに繋げられると判断できたことから導入に至りました。

 

さらに、近年のAI技術の進歩をリードタイム短縮のために使わない手はないとおもいますが、dodaでは人材紹介や求人広告、私の所属するダイレクトソーシングサービスなど様々な事業が存在しているが故に、ガバナンス整備が難しく、データ利活用には制限があるのが実態でした。

そこで、ひとまずdodaダイレクトでの利用に絞り適切にデータ利用範囲をコントロールすることで、高度な活用におけるリスクを小さくすることで、利活用できないかを検討しました。

 

Snowflake導入の際のポイント

1. 構築時のポイント

導入する際に最も意識した点は、どのデータを連携するかの精査でした。

導入後にユーザーに使ってもらうためには、サイロ化されたデータの全体像を把握し、それらを一元的に集約することで、「欲しいデータはすべてここにある」という状態を作る必要があると考えました。

そのため、普段から社内データを使用している有識者を巻き込むことが非常に重要です。

自分自身もある程度全体像を把握しているつもりでしたが、実際に深掘りしてみると、「そんなデータまで見に行っているのか」と驚くようなデータが多々ありました。

正直に言うと、現在進行形で不足しているデータがあることは往々にしてあります。

そのため、開発体制を整え、スピード感を持って連携できるようにする体制構築も重要です。

 

2. 運用開始後のポイント

一度Snowflakeの構築が完了しても、実際にユーザーに使ってもらうまでには多くのステップがあります。

特に、ユーザーが新しいシステムを初めて使う際にうまく使えるかどうかが、継続的に利用してもらえるかのポイントになると考えています。

そこで、説明会を開催し、クエリの実行方法を一緒に学びながら、手順書を提供することで、ユーザーが自信を持ってSnowflakeを利用できるようにしました。

また、データカタログの見方を教えることで、ユーザーが必要なデータを迅速に見つけられるようにしました。

 

さらに、新規参画者の方もスムーズに利用開始できるよう、アカウント発行依頼はSlackのワークフローを通じて申請できるようにし、迅速かつ効率的に対応できる体制を整えました。

 

Snowflake導入後の今

現在構築を進めている環境の概略図になります。

 

主要なデータの集約はできてきつつあり、データの民主化に向けて利活用が推進し始めたという状況です。

もちろんAI機能を活用することもできており、SQLの自動生成や自然言語での分析に向けた準備が進められています。

 

今後の活用展望

活用展望としては大きく2点です。

1. 自然言語による分析(Snowflake Intelligence)

Snowflakeは定期的にアップデートが行われており、特に注目なのはSnowflake Intelligenceです。

前述しましたが、今の時代はSQLがかけずとも自然言語で質問を投げれば洞察を得られる世界になっています(数年前では本当に信じられない世界…)。

データが欲しいとなったときに、エンジニアやアナリストと要件をすり合わせて、優先度調整をして、やっとの思いで得られた結果が意図と違った…みたいなことが経験ある方も多いのではないでしょうか。

自然言語でAIと会話しながら数分で欲しいデータが得られる夢の世界観、これが実現出来たら施策立案や検証のスピードが劇的に上がることは確実です。

2. プロダクト活用

今までは、データを活用した施策を実行する際に、プロダクト開発エンジニアのリソースを大幅に使って開発を進めなければなりませんでした。

しかし、今回のCDP基盤を整えたことで、データ調査、データの加工、顧客のセグメンテーション、セグメントに対する接客サービスアプローチが企画職でもある程度進められるようになり、プロダクトでの機能実装スピードの大幅な向上が期待できます。

また、今後はLLMを活用したマッチングにもデータを活用し、プロダクトの価値向上に貢献できると考えています。

 

これらの展望実現に向けて整備を進めておりますので、成功事例などをまたどこかで発信できればと思います。

最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

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宮澤 謙太 Kenta Miyazawa

クライアントプロダクト本部 テクノロジー統括部 テクニカルプロダクトマネジメント部 TPM第3グループ

2018年4月新卒入社。入社以来現在に至るまで法人向けのダイレクトソーシングサービスである「doda ダイレクト」でプロジェクトマネジメントを中心に従事。プロダクト開発、DX推進、データ領域など幅広く担当。

※この記事では、2025年9月時点の内容を記載しています。