データサイエンティストのたまご育成日記 vol.11-カスタマージャーニーマップ作成のお話-

みなさん、こんにちは!デジタルテクノロジー統括部に新卒入社した長谷川智彦です。
データサイエンティスト未経験の新卒社員がデジタルテクノロジー統括部でどんなことをやっているのか、どのように成長していくのかの学びの過程を記録していくこの企画。今回はカスタマージャーニーマップについて書いていこうと思います。


さて、今年もあと1,2か月となり飛ぶように時間が過ぎていきますね。これまでの記事では研修や実務で学んだデータ分析に関わる知識に関して書いてきました。ただ、今回はデータ分析の業務の傍らで行っている企画周りについての記事です(データサイエンスはほとんど関係ないです)。


時はさかのぼり、デジタルテクノロジー統括部に入社して全体研修を終えた5月初め、先輩社員からこのような提案を受けました。
『自分がやりたいことを決めて僕たちに提案してください。』
なんと、新卒に関わらず提案して許可をもらえれば、やりたいことをやらせてもらえるのです!このことを受け、個人的に新サービスの企画から立ち上げ、サービスのグロースまでを経験したい僕は、データ分析業務をする傍ら、いろんな先輩のお力を借りて、自分が作りたいサービスの企画を練っています。


この企画を作成する際に大事になる考え方の一つに『誰にどんな価値を提供するか?』というものがあります。どんなものを作るかも大事なのですが、その前にその作るもので誰がいい体験を得れるのか?どんないい体験を得れるのか?を意識することによって市場に出した時にターゲットとなる人々に響くように設計できます。ただ、逆に言えばこの『誰』と『どんな価値』を探さなければいけません。今回、考えている企画のアイデアが本当にターゲットとして考えている人々(誰)にとってニーズがあるのか(価値があるのか)を検証したい。また、どんなニーズが実際にあるのかを発掘したいといった目的からターゲット像に近い方たちにインタビューを行い、カスタマージャーニーマップの作成を行いました。ただ、具体的な中身はまだ言えないので、インタビューやカスタマージャーニーマップ作成で意識したことやこういった定性調査と普段行っている定量調査の違いに関しても触れていこうと思います!


定性調査と定量調査

今回行ったインタビューとカスタマージャーニーマップ作成は定性的な調査で使われる手法です。一方、今までの記事で書いてきた機械学習などを使ったデータ分析は定量的な調査になります。これらの定性調査と定量調査の違いをまとめると以下の図のようになります。

それぞれ特徴とメリット・デメリットがあるので適切に使い分けることが重要なのですが、使い分ける際に個人的に意識しているのが分析の目的のところです。数量データを用いた効果検証、ターゲットの特定など数値によって何かを確認・裏づけしたいときやマクロな視点での事実を確認したいときは定量的分析を行います。定量的にデータを比較できることや効果の度合いなどが数値として表れるのがメリットで、データサイエンティスト/アナリストが行う分析として期待値が大きいと思います。
一方、定量分析ではデータの裏側にあるユーザーの心情や背景、行動の詳細を把握するのは難しいです。その面、定性分析はこれらの感情の変化や思考、行動の理由、ユーザーの背景を捉えるのに向いています。これらの情報を元にユーザーが持つニーズやサービスを使わない原因などを発掘して仮説の構築をしたいとき、数値化しくい声や反応を知りたいときなどの目的で分析を行いたいときは定性分析を行うことを考慮します。しかし、定性分析を行うにあたって、うまく話を引き出せなかったり、こちらの望む方向へと誘導しすぎてしまうことが起こってしまうのでインタビューを行う人の能力に依存することが生じやすいのがデメリットです。


これらの特徴を踏まえて定量調査と定性調査を使い分けるのですが、ここからは本題である定性調査の手法の一つであるカスタマージャーニーマップについて書いていこうと思います。



カスタマージャーニーマップについて

さて、ここからはカスタマージャーニーマップについて書かせていただこうと思います。上に例となる図を載せたのですがカスタマージャーニーマップとは、私たちがターゲットとするペルソナ像に当てはまるユーザーにインタビューを行い(またはネット情報の情報を拾って)、カスタマーがどのような行動や思考を行っているのかを整理しまとめた表です。正直形式はいろんな形があるのですが、いろんな文献を見た中で上記の例に挙げた項目を載せているものが多いのかなと感じます(もちろん目的によって形・デザインを変えてOKです)。

\\ カスタマージャーニーマップの主な項目 //
ペルソナ:自分たちが狙いたいターゲットの具体像(具体的な1人について書いたり、カテゴリーで大きく括ったり、とどこまで具体的にするのかも目的次第)
フロー:ターゲットが行う一連の行動(具体的にイメージできないときはAIDMAやAISASなどのフレームワークを使うのもお勧めです)
チャネル:ターゲットが使うメディア媒体やコンタクトをとる場所などの接点
行動:各フロー段階でユーザーが取る行動
思考:行動をとる際に意識していること、価値観
メンタル:各フロー段階での感情の変化
課題(ニーズ):各フロー段階で浮かび上がってくるターゲットが直面する課題や悩み、ニーズなど

では、項目の内容に関してなぜこうなっているのか上の図を使いながら少し見ていきたいと思います。
あるターゲットユーザーが目的の行動(タスク)を実現するまでの流れをイメージしてください。やはり一番欠かせないのが主人公となるユーザー自身です。このユーザーについて価値観や気質、属性情報を決めておくとイメージがしやすくなり、かつ、後程出てくる行動と思考につながる土台となるので設定しておきます(ペルソナ作成)。次に、目的の行動といっても色々あるのでユーザーが遭遇しているシーンを設定します。これが連なるとフローとなっていきます。そして各シーンではユーザーは目的の行動を達成するために考えながら行動します。これが行動と思考の欄です。行動をする際にWebサイトを使う、スマホを使う、車で移動するなどユーザーは必要に応じてツールを使ったり、どこかの施設に行ったりします。この目的の行動に達するまでにユーザーと接点になるツールなどをまとめているのがチャネルです。また、行動する中でユーザーの感情は変化していきます。そのシーンの中での感情や気持ちの浮き沈みを記録するのがメンタルの欄です。最後にインタビューしていると自然とユーザーから「もっとこうなればいいのに」などの声を拾えたり、全体の項目を見てここが課題やニーズになるのではないかと発見ができます。それを書くために個人的に課題の項目を基本設定しています。
こういった流れでユーザーが目的の行動(タスク)を達成するまでに知りたい情報がきっちりカスタマージャニーマップでは項目としてそろっています。

このカスタマージャニーマップを作成するまでの流れとしては
①作る目的を明確にする(個人的に1番大事だと感じます)
②ターゲットからどんなことを引き出したいのかを決め、質問票やシナリオ(台本)を作成する
③インタビューに協力してもらえるターゲットを探す
④インタビューを実施する
⑤インタビューの結果を整理し、考察、設定した目的に対しての発見がないか探る
(必要であればピポッドしたりしながら①~⑤を何回か繰り返す)
の一連の流れを取ります。

さてこれ以上の詳細は他のWebサイトや専門書の方にお任せするとして(わかりやすい説明がたくさんあります)、ここからは個人的に、カスタマージャーニーマップを作成するうえで行うインタビューで工夫していることと難しいと感じることを書いていこうと思います!




個人的に工夫していること

個人的に工夫していること!っといってもそれほど大それたことはなく、特にインタビューにおいて以下のことだけしっかりと意識しています。

\\ 個人的に工夫していること //
僕にとっての魔法の言葉『なるほど、そうなんですね!ちなみに、教えてほしいんですけど』を織り交ぜて思考や行動の裏にある理由を深ぼること


ではなぜこのセリフを使うのか。なぜ思考や行動の裏の理由を深ぼるのかのところの話を広げたいと思います。カスタマージャーニーマップはターゲットユーザーの思考や行動をフローに沿ってインタビューを実施しながら情報を得ていきます。ですが、正直この情報がインタビューじゃなければ取れないのか?と聞かれれば、そうでもなく、アンケートなどの他の方法でもある一定の情報は得られるかなと思います。しかし、アンケートに限って言えば質問項目に知りたい情報を織り交ぜてデータを集め、集計を行えますが、聞いたこと以外の情報は基本あまり得れません。特に、どうしてそのように考えるのか、行動の際に他に合わせて行っていることはあるのか、どうしてその行動をとるのかなど思考や行動についてもっと深く知りたいとなったときに集めたデータからは回答はあまり見えてきません。なので、これらのことをリアルタイムの反応を見ながら掘っていけるのが定量調査にはない定性調査の強みなんだと考えています(データ分析をする中で一層このことは感じます。でも定量調査も強みはありますよ!)。
例えば、アンケートで『書籍を以下のどの手段で購入されていますか?(複数選択あり)』という質問を置き、書籍を買う手段やチャネルを並べることでどのチャネルを通して購入する人が多いのかを定量的に集計することはできます。しかし、おそらくよほどうまく質問を組まなければ、『書籍は大きい書店に行ってブラ~とみてからふと気になった本を手に取ってしばらく読むんだよね、それで気に入ったら買う。その方が一期一会の出会いのような感覚があって好きなんだ。』のようにそのシーンが具体的に想像できるような回答やその行動をする動機などの情報を得るのは難しいです。ただ、インタビューだとこういった意見が比較的引き出しやすくなります。


さて、引き出しやすくなりますと簡単に書きましたが、やはりここが難しいんですよね。気になることに関してどうして?どうして?と深ぼることはできますが、あまりストレートに立て続けで聞いてしまうと相手はストレスを感じてしまいかねません。僕もインタビューに挑戦したばかりときはついつい質問を連発してしまい、後々相手に申し訳なかったなと感じたことが多くあります。かつ、質問ばかりで会話を続けていくのは難しい。そうしているうちに見つけた僕にとっての魔法の言葉が『なるほど、そうなんですね!ちなみに、教えてほしいんですけど』という言葉です。なぜ、このフレーズを意図的に使うのかというと、このフレーズによって自分の相手に対する構図が少し変化します。どういう構図の変化が起こるかというと『相手に質問する』という構図から、『相手に共感し、自然と話してもらう/教えてもらう』の構図に変えることができます。個人的に、人は自分が中心にいる話をする、または相手に教えることが一定好きだと考えています。逆に相手から自分が持っているものを引き出されることには対抗ある方が多い気もしています。質問をする構図だと、相手にとっては自分の情報を渡すことになるので抵抗のある方は情報を絞ってしまい多くを引き出すことが難しくなります。ですが、「なるほど、そうなんですね!」(共感+発見させてもらった)からの「ちなみに、教えてほしいんですけど」(教えてもらう構図に変える)のフレーズを使うことで相手が自分から話をするの構図に代わるので、自分の思う以上に面白い話が聞けてきます。おそらく、こういったフレーズはインタビューや営業をされている方はいくつか持っていらっしゃったり、書籍でもたくさん参考になるものがあるのですが今回は僕の記事なので個人的に使っているフレーズを一つ紹介させていただきました。ぜひ使ってみてください!


総括

長々とカスタマージャニーマップに関して書いてきましたが、作成したのちは整理し、自分たちが仮定していたことと違う点は何かや見えてくるニーズをまとめて、アイデアのタネを見つけていき、見つけたタネを元に企画を考えたらビジネスモデルキャンパスに落し込んでまとめていきます。
今回企画のアイデアを検証、発見するうえであった学びとしては以下のものがありました。
・定量分析と定性分析のメリット・デメリットをリアルに実感できた。
・新卒で定量分析が求められる立場でメンバーの先輩社員にインタビューをお願いするのは勇気が必要だったが快く協力してくれうれしかった+それを許容してもらえる環境に感謝。
・記事を作成する中でカスタマージャニーマップの項目が、人がタスクを達成するうえで考慮すべき点をしっかりと踏まえていることを再発見できた。
・定量分析も楽しいが、定性分析も楽しい
・インタビューの会話をもっと広げるために普段からいろんなものに触れて引き出しを増やしておこうと感じた。
といった感じです。
それでは今回の記事はここまでです。次回のデータサイエンティストのたまご育成日記も楽しみにしておいてください!


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長谷川 智彦 Tomohiko Hasegawa


デジタルテクノロジー統括部 データ&テクノロジー ソリューション部 アナリティクスグループ

大学時代の専攻は植物学・分子生物学。最近趣味でデザインをかじり出した社会人1年目。植物の実験データを正しく解釈するために統計を勉強し始め、データ分析に興味をもつ。データサイエンスはただいま必死に勉強中。

※2020年11月現在の情報です。