
2023年12月、約15年間続けてきた編集・ライターのキャリアから離れ、パーソルキャリアでWebディレクター(PdM)として新しい職種に挑戦しました。立場は変わりましたが、日々の業務を通じて「編集者として磨いてきた能力は、PdMの仕事と地続きだ」と実感しています。
編集とPdMは一見まったく異なる職種に見えます。しかし、ユーザー視点で課題を捉え、数値を根拠に意思決定し、多様な関係者と協働して成果を出す──という本質的な部分は共通していました。
ここではWeb専業メディアの編集記者や事業会社のオウンドメディア編集ディレクター、ニュースサイトの編集長などを経験してきた私が、PdMに転向して「特に役立った」と感じたスキルを3つに絞って紹介します。
1. 数字へのコミット、分析力

Webメディアは、良くも悪くも数字に非常にシビアです。特にここ数年は広告単価の下落により、セッション数×広告単価で売り上げを立てる従来のビジネスモデルのみでは存続が危うい状況になっています。
アクセスが落ちれば売り上げに直撃し、売り上げが落ちれば、最悪の場合、廃刊になる。編集者であっても、数字を理解し、改善の打ち手を考え続ける必要がありました。
私は編集者時代、
・記事ごとのPVや売り上げ
・流入経路別×読まれるタイトルの傾向
・曜日や配信時間ごとの流入傾向
といったデータを日々分析し、ベンチマークとする他媒体の記事も含めて「なぜこの記事は読まれるのか(配信先でランキング上位に入っているのか)」「(面白そうなテーマなのに)なぜ思ったより伸びなかったのか」などを言語化し、良いものはすぐに取り入れて、うまくいかなったらいったん止める、といったことを習慣にしてきました。
この“数字に基づいて思考し、すぐに行動する姿勢”は、PdM業務に強く直結しています。
PdMは企画の価値を「定量」で説明し、投資の判断基準を「指標」で示し、成果を「データ」で証明することも求められる仕事です。数字に対してストイックであることが、プロダクトの優先順位付けや仮説検証の精度を大きく左右します。
Web編集者として積み上げた“数字から逃げない姿勢”は、PdMとしての意思決定における確かな武器になりました。
2. “あいまいな状態でも前に進める”の胆力

プロダクト開発には、不確実性がつきものです。要件が固まらない、ユーザーのニーズが読めない、関係者の意見が分かれる……など。それでも、プロジェクトは止められませんし、意思決定は待ってくれません。
この状況は、実は編集の仕事と非常によく似ています。
編集者は常に「確実な正解がない中で企画を形にする」仕事です。テーマ選定も、構成も、取材の方向性も、全て仮説の連続。迷いながらも、締め切りや目標達成(媒体の月間PV目標や売り上げなど)に向けて前に進む胆力が求められます。
PdMとして働く中で、この“あいまいさに耐える筋力”が非常に役立ちました。
完璧に整理されてから動くのではなく、
・不明点があっても仮説で前に進める
・判断の背景を言語化し、次の検証につなげる
・不確実性そのものを前提としてプロジェクトを設計する
こうした動きが、プロダクトを前に進める原動力になります。
編集者時代に培った胆力は、PdMになってからも確かな支えになっています。
3. 結局はシステムではなく人間

PdMになって最初に直面した壁は、「システム以前に、人が動かなければプロダクトは動かない」という事実でした。
特にパーソルキャリアのような大規模な組織では、エンジニア、デザイナー、マーケ、営業企画、法務、コンプライアンス……など、関わるステークホルダーが非常に多く、誰か1人との認識齟齬(そご)がプロジェクト全体に影響します。
振り返ってみると、編集長として働いていた頃も“調整の仕事”はありました。
・目標達成に向けて人員含めた戦略を考え上長に掛け合う
・記事テーマによっては炎上リスクがないか関係者と相談する
・サイトのUIUX変更やツール改修などの優先順位をエンジニアや企画と調整する
・外部ライターの特徴をくみ取り、良さを生かしたまま小学生でも理解できるような分かりやすい文章に整える
「どのタイミングで」「誰に」「どう伝えれば」チームが動きやすいかを考える時間は、今振り返ればPdM業務そのものでした。
プロダクトはシステムの集合体ですが、それを動かすのは人です。どれだけ正しい企画でも、関係者が納得していなければ前に進みません。PdMとして成果を出すうえで、最も大事なのは“人を理解し、伴走してもらうためのコミュニケーション”なのだと実感しました。
編集現場で鍛えた調整力は、PdMとしての土台になっています。
編集からPdMへ。キャリアの延長線上にあった転向
「編集とPdMはまったく違う仕事」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、私の経験では、多くの能力・スキルが共通しています。ユーザー視点、数字理解、あいまいさへの対応、関係者調整──これらは編集者として当たり前のように積み重ねてきたものです。
もちろん、プロダクト開発の専門知識や技術理解など、新しく学ぶ必要のある領域は多くあります。それでも、編集者としての経験が確かなアドバンテージになっていることは間違いありません。
私自身、まだPdMとして成長している途中ですが、「Web編集者からPdMへの転向は十分に成立する」。そう断言できるくらい、両者のスキルはつながっています。
Web編集者からからPdM・Webディレクターを目指す方にとって、この文章が少しでもヒントや背中を押すきっかけになれば幸いです。

上口翔子 Shoko Kamiguchi
プロダクト&マーケティング事業本部 クライアントプロダクト本部 プロダクトマネジメント統括部 PdM1部
高専から大学に編入したものの、エンジニアの道に進まずWebメディアの編集記者としてキャリアをスタート。約15年メディア企業や事業会社で勤務したのち、2023年にパーソルキャリアに中途入社。現在は中途採用支援システム「doda CONNECT」の企画・ディレクションを担当
