経営・事業視点からPdMの価値を語る――本部長が明かす成長戦略

パーソルキャリアでは、「転職支援」から「キャリア支援」へと軸足を移す中、プロダクトマネージャー(PdM)を変革の中核に据えて、体験と構造の再設計に挑んでいます。

今回は、パーソルキャリア カスタマープロダクト本部 本部長の福島 直人に、PdMの戦略的な価値、組織が向き合う変革の本質、そしてAI時代のキャリア支援について話を聞きました。

 

「転職支援」から「キャリア支援」へ。PdMが描く、新しい体験設計の起点

――本日はよろしくお願いします。まずは、カスタマープロダクト本部の役割について教えてください。

福島:これまで当社は「転職支援」を軸に事業を展開してきましたが、いまは「キャリア支援」へと進化する転換期にあります。目指すのは、転職に限らず、一人ひとりの可能性に長期的に寄り添うことです。

パーソルキャリア カスタマープロダクト本部 本部長 福島 直人

その実現に向け、カスタマープロダクト本部では、既存サービスの価値を磨き込み、顧客体験の質を高めるだけでなく「PERSOL MIRAIZ」など、在職者向けの新たなキャリア支援サービスの企画・開発を推進しています。

転職という結果に限らず、その活動自体に「確かな価値があった」と感じてもらえることこそ、私たちが目指すサービスのあり方です。

そのために、転職希望者とのあらゆる接点を設計し、最適な体験を生み出すことが、カスタマープロダクト本部の役割です。


――パーソルキャリアにおけるPdMの役割について、どのように捉えていますか?

福島:PdMと聞くと、Webサイトやアプリなどの「デジタルな接点」での企画・ディレクションを担うイメージを持つ方も多いと思います。しかし、私たちパーソルキャリアのPdMは、そのデジタルの枠に留まりません。キャリアアドバイザーやキャリアコンサルタントによる対話や支援など、「人を介した接点」もすべて含めて、ユーザー体験全体の設計を担っています。

デジタルとリアルの両方を繋ぎ、サービス全体を構築していくことこそ、パーソルキャリアにおけるPdMの本質だと考えています。


――パーソルキャリアのPdMに求められている力とは何でしょうか?

福島:より良い顧客体験を実現するためには「データ」と「AI」の活用を前提とした設計が不可欠です。属人的な判断だけでは限界があるため、ユーザーの行動や感情をデータから読み取り、最適な体験を各接点でプロダクトとして実装する力が問われます。

従来のように「人がどう動くか」といった業務改善の発想だけでは、一人ひとりにパーソナライズされた体験はつくれません。だからこそ、テクノロジーの可能性を引き出し、より高精度なデータの利活用を推進することが、これからのPdMに求められています。


――PdMが経営や事業に貢献していくために、乗り越えるべき課題は何だと考えますか?

福島:PdMがより経営に寄与していくうえで避けて通れないのが、「現場との距離」をどう乗り越えるか、という点です。

PdMはWebやアプリといったデジタル領域に強みを持っていますが、実際に顧客と向き合い、最前線でサービスを届けているのは営業やキャリアアドバイザーなど“人”の存在です。その現場で、どんな判断がされ、どんな会話が交わされているか――その細部まで理解しないままでは、本質的な体験設計はできません。

そのためには、PdM自身が現場のリアルを正しく捉え、深く入り込んでいくスタンスが欠かせません。だからこそ「現実を知りにいく覚悟」と「現場とともにサービスをつくる姿勢」があって初めて、PdMは価値あるサービス体験を実現できると考えています。


――より実効性のある体験設計を進めていくために、どのような体制づくりを進めているのでしょうか?

福島:この4月に、営業企画とPdMの企画組織をひとつに統合しました。もともと連携はしていたものの、意思決定の分断や調整コストといった課題を抱えていました。

そこで、よりシンプルに、速く意思決定できる組織へと変更し、人とデジタルの接点を横断して設計・運用できる、一体的な体制を実現しています。

また、営業経験を持つメンバーの参画により、現場のリアルがプロダクトに反映されやすくなった点も大きな変化です。

今後は、そうした人材がPdMとしてのスキルを広げ、領域横断で活躍できる組織づくりも構想しています。こうした変革を通じて、より強く、しなやかな組織へと進化していきたいと考えています。

「AI×人」で届ける、納得と安心のキャリア体験――転職希望者視点の本質的価値

――HR業界のビジネスモデルは今、どのように変化しており、その中でPdMの役割はどのような重要性を持つのでしょうか?

福島:HR領域は、法人営業やCAといった「人」の介在が不可欠であり、これまではその“営業力”を武器に成長してきました。

しかし現在は、転職が一般化しつつあり、情報も世の中にあふれています。その結果、サービスの違いが見えにくくなり、選ばれる理由が「どのような体験ができるか」へと変化しているんです。だからこそ、「このサービスを使って良かった」と思ってもらえる体験をどう設計するかが重要になります。

そして、その多くは、Webやアプリなどのプロダクトを通じて提供されており、PdMが担う体験設計こそが、サービスの競争力を左右する時代になっているのです。


――転職支援サービスにおける、課題やニーズについて教えてください。

福島: ひとつは、キャリアアドバイザーの経験やスキルによって、マッチングの質にばらつきが出てしまう点です。サービス全体の質を底上げするためには、「対応の標準化」が重要になります。

また、転職希望者と求人企業の間には、依然として情報格差があり、結果としてミスマッチが生まれてしまうケースもあります。

さらに、日本では転職が一般的になりつつあるとはいえ、実際に動き出す段階になると、不安や迷いを抱える方も少なくありません。「誰かに相談したい」「背中を押してほしい」という本質的なニーズは、いまなお根強く存在しています。

そのため、不安に寄り添える人の支援には、これからも確かな価値があり、転職サービスは必要とされ続けると考えています。


――そうした課題を踏まえ、転職希望者に本当に価値ある体験を届けるためには、どのようなアプローチが必要でしょうか?

福島:現在、パーソルキャリアでは、「AI」と「人」を重要なキーワードとして掲げています。テクノロジーの進化により、転職希望者の行動や志向性をデータから分析し、より精度の高いレコメンドや支援が可能になってきました。

しかし、AIでは捉えきれない領域もあります。不安や迷いといった感情面の機微は、数値やロジックだけでは測れません。そうした部分に寄り添い、共感や納得を引き出すのは、やはり“人”の力です。

希望条件をすべて満たす転職が難しいとき、「何を優先すべきか」「これまでの経験をどう活かすか」といった対話を通じて、転職希望者の行動が前向きに変化していく――このプロセスは、まだ人にしかできない領域だと思っています。

だからこそ、私たちは「AI」と「人ならではの価値」をかけ合わせることで、一人ひとりに最適なサービス体験を届けていきたいと考えています。

PdMがリードする“AIネイティブなHR組織”への進化。体験と構造を再設計する

――サービス体験を高めていくために、どのような変革が求められていると考えていますか?

福島:これから私たちが本格的に挑むのは、「AIネイティブな組織」への進化です。これは、AIを一部の業務に取り入れることではなく、経営・組織・サービス・人材のあらゆる基盤を、AIを前提に再設計していくことを意味します。

顧客体験の質をこれまでにない次元へ引き上げるためには、AIをどれだけ深く戦略に組み込み、全社で一貫して機能させられるかがカギになります。

私たちはいま、まさにその変革フェーズに踏み込んでいく段階にあると捉えています。


――次のフェーズに向けて取り組もうとしているテーマを教えてください。

福島:今後の変革を加速させるうえで重要なのは、経営資源である「人・情報・資金」を、これまで以上に戦略的に活用していくことです。

まず「人」については、サービスや業務の変革に、PdMが本格的に関与していくフェーズに入りました。特に、人が担ってきた業務の「どこをAIに任せるべきか」「どこが人だからこそ価値を発揮できるのか」といった“役割の再定義”によって、顧客体験を進化させることが求められています。

同時に、業務設計のあり方そのものも、AIネイティブな視点で再構築していく必要があります。業務プロセス、企画アプローチ、思考の仕方といった根幹部分から見直す姿勢が欠かせません。

そして、その変革を推進していくうえでは、人材のリスキリングも重要です。従来のやり方にとらわれず、テクノロジーと人を横断的に理解し、構造的に設計できる人材を育てていく――難しくもやりがいの大きいチャレンジ領域だと感じています。


――「情報」の面における、重要なテーマも教えてください。

福島:人の領域での変革を進めるためには、質の高い一次情報の蓄積と活用が大きなテーマです。

例えば、「求人マッチングの精度を上げたい」と考えたときに、その精度を高めるための情報が現場できちんと取得されていなければ、いくらAIを導入しても成果には繋がりません。そのため、ヒアリング内容や業務フローを標準化し、データとして活用可能な形で蓄積していく仕組みづくりが重要になります。

こうした取り組みは単なるオペレーション整備ではなく、現場のはたらき方そのものを変えるチェンジマネジメントの領域です。

そして「資金」の面では、人と情報の変革を加速させるために、AIやデータ基盤への戦略的な投資を進めていきます。

顧客体験を本質的に進化させるには「人・情報・テクノロジー」のすべてが連動していることが不可欠です。その全体を設計し、動かしていく存在として、PdMの果たすべき責任はこれまで以上に大きくなっていると感じています。


――PdMにおける経営との接続は、どのように考えていますか?

福島:PdMは、経営のビジョンと現場の実行を繋ぐ中核的な存在だと捉えています。
「どんな社会を実現したいか」「このビジネスで何を成し遂げたいか」といった経営の想いを、具体的なアクションへと橋渡しするのがPdMの役割です。

もちろん実行フェーズでは、プロダクトを形にするエンジニア、UI/UXを磨くデザイナー、精度を支えるデータサイエンティストなど、あらゆる職能の力が重要です。

しかし、それぞれの力を最大限に引き出すには、現場の実情を正しく理解し、課題を見極めたうえで、最適なアプローチを図る必要があります。

だからこそPdMは、単なるプロジェクトの推進役ではなく、経営と現場の「意図と実行」を繋ぐハブとして、パーソルキャリアにおいて極めて重要なポジションだと考えています。

テクノロジーと人間らしさの融合で変わる、これからのキャリア支援のカタチ

――いまのパーソルキャリアで、PdMとしてはたらく魅力は何だと考えますか?

福島:デジタル接点だけでなく、人を介した接点まで含めて、サービス全体の体験設計に深く関われることが、パーソルキャリアのPdMならではの面白さだと思います。

こうした「オンラインとオフラインを融合したPdMの役割」を担える環境は、決して多くありません。事業の未来を構想し、サービスの根幹からつくっていけるダイナミズムこそが、いまパーソルキャリアでPdMとしてはたらく最大の価値だと感じています。


――パーソルキャリアのPdMにおいて、求められるスタンスや考え方を教えてください。

福島:私たちが求めているのは、「好奇心」と「ギバー精神」を兼ね備えた方です。好奇心は、新しい顧客体験を生み出す原点であり、協力連携の源泉にもなります。

新しいアイデアや打ち手は、突然ひらめくものではなく、日々のインプットや小さな試行錯誤の積み重ねから生まれます。そして、「これは課題かもしれない」と感じ取れる感性もまた、好奇心があってこそ育まれるものです。

また、PdMは非常に広範な役割を担い、多くの関係者を巻き込んでプロダクトを前進させていく必要があります。そのためには、自分の考えを押し通すのではなく「なぜこの人はそう感じたのか」と相手の立場に立って考える姿勢が欠かせません。

これらの根底には「なぜ」と問い続ける好奇心があります。

さらに、周囲を自然にサポートできるギバーの姿勢も重要です。自ら誰かを助け、支え続けているからこそ、いざというときに手を差し伸べてもらえる関係性は、日頃から周囲を支える姿勢があってこそ、自然に生まれます。

好奇心を持って問い続け、仲間を信じて支え合う――そうした姿勢や考え方に共感できる方と一緒に、これからの未来をつくっていきたいですね。


――最後に、カスタマープロダクト本部の中長期的なビジョンについて教えてください。

福島:私たちが目指すのは、「AI×人」の力を融合させた、まったく新しいキャリア支援の実現です。

「使って良かった」と思ってもらえるサービスは、一人ひとりのニーズや価値観にどれだけ深く応えられるかで決まります。しかし、それを正確に捉えるには、AIの力だけでも、人の力だけでも限界があります。

だからこそ、テクノロジーの精度と人間らしい温かさをかけ合わせ、これまでにないサービス体験を創出していく――それこそが、今私たちが挑んでいる変革です

カスタマープロダクト本部として、その“新しい体験”を形にすることに、誇りと責任を持って取り組んでいきたいと思います。

 

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福島 直人 Naoto Fukushima

カスタマープロダクト本部 本部長

パーソルキャリア株式会社に新卒入社。営業を経験後、商品企画、営業企画、事業企画などを経験。国際政治経済やマーケティング、科学技術に興味があります。

※2025年11月現在の情報です。