
「これからのキャリアの選び方に、正解はあるのか?」
多様なはたらき方が広がる中で、私たちは選択肢の多さに戸惑いながらも、自分らしさを軸にしたキャリアを模索しています。そうした問いに、長年向き合い続けているのが、新規事業「PERSOL MIRAIZ」の事業責任者であり、編集者・PdM・サービスデザイナーと複数の領域で専門性を高め、BTCを越境するキャリアを歩んできた伊藤光生です。
肩書きや組織の枠にとらわれず、「新しい価値を届ける」という一点に真摯に向き合う姿勢は、これからの時代を自分らしく進むためのヒントになるはずです。今回は、「問いを立てること」を軸にキャリアを築いてきた背景や、サービスづくりに込めた思い、「肩書きにとらわれない」はたらき方の本質について語ってもらいました。
- “編集者”から“事業責任者”へ。問いに導かれたキャリアの変遷
- 変わりゆく価値観を受け止めながら、自分らしさをはたらく中で見つけていく
- 問いと余白から育まれる、信頼される事業づくりを目指して
- 「はたらく」を問うすべての人に届けたい、新しいキャリア支援のかたち
“編集者”から“事業責任者”へ。問いに導かれたキャリアの変遷
――本日はよろしくお願いします。まずは、伊藤さんのこれまでのご経歴と現在の役割を教えてください。
伊藤:大手教育会社にて、子ども向け雑誌の編集者からキャリアをスタートしました。編集は一見、言葉を扱う仕事に見えますが、その本質は「新しい価値を生み出す役割」だと捉えています。テーマや企画を立て、社会や読者にとっての新しい視点をデザインしながら、さまざまな経験を重ねてきました。

編集長も経験し一定やり切ったかなと思えた頃、これからの時代、ソフトウェアとネットワークの要素も等価に扱うことのできる能力がイノベーションには不可欠だと考え、PdM(プロダクトマネジャー)に挑戦しました。
約10年間にわたりプロダクトマネジメントに携わり、スタートアップでプロダクト責任者として事業を一定のところまで成長させた後、2023年10月にビジネスストラテジー・ブランディング・プロダクト・サービス・組織デザインとBTCを越境してデザインを行うサービスデザイナーとして、パーソルキャリアへ入社しました。
現在は、新規事業の事業責任者として、「キャリアの可能性を広げる、新たな支援のかたち」を探索し、チームと共に推進しています。
――異なる職種を横断してきた中で、共通して大切にしてきたことはありますか?
伊藤:キャリアの変遷を見ると、次々と役割を変えてきたように映るかもしれません。しかし、その根底には、この広くて深い世界を、自分なりに見つめてみたい好奇心があり、「問いを立て、それを起点に新たな価値をつくる」という軸を持っています。
私にとって仕事とは、決して明確な答えを出すことだけではなく、「本質的に問うべきことは何か?」を見極めることともいえるかもしれません。明確な答えがない場面でさえ、探求の中にこそ、これまでにない視点や可能性があると考えています。
そのため、職種や環境を「変えてきた」というよりも、旅人や冒険者のようなスタンスを大事にしながら仕事を歩んできた結果、その時々の問いに導かれ、気づいたら役割や領域が広がっていったという感覚に近いです。役割ごとの専門性を活かしながらも、自分を特定の枠に閉じ込めず、新たな価値観や視点を受け入れてきました。
そうした柔軟さこそが、私のキャリアを形づくってきたのだと思います。
――伊藤さんの価値観やスタンスは、どのような経験から育まれたのでしょうか?
伊藤:私の中には今も変わらず、子どものような純粋な好奇心があります。自ら組み立てた新しい価値や構造を通して、「誰かに喜んでもらいたい」という思いをずっと大切にしてきました。
原点には、キャリアの初期に携わった小学生向け学習雑誌の編集経験があります。子どもたちは、私たちが設計した枠組みを軽やかに飛び越え、想像を広げ、思いがけない発想や行動を見せてくれました。
そのため、プロダクトやサービスを設計する際にも、「作り手の意図」だけで構造を埋め尽くさないように意識しています。子ども同士の無邪気な対話から自然と生まれるような「学びの創発」は、これからも大切にしていきたい価値観であり、現在のサービス設計にも活かされています。

――問いを求め続ける中で、伊藤さん自身が大事にしている考え方はありますか?
伊藤:具体と抽象の行き来、思考と実験の行き来、個人とチームの行き来――そういったものの間を振り子のように行き来する感覚は大事にしています。そうすることによって自分自身の役割を固定化せずに、何かと何かの間に新しい文脈が生まれてきたり、まだ名前の付いてないような気配なものみたいなものを、そっと救い取るようなことができるような気がするんです。その感覚が新しい場所や仲間との出会いに、自分自身を連れてくることができるように感じています。
変わりゆく価値観を受け止めながら、自分らしさをはたらく中で見つけていく
――キャリアの選択肢が増える中で、どうすれば自分らしさを見失わずにいられるのでしょうか?
伊藤:前提として、編集者やPdM、デザイナーなど、それぞれの役割に求められる専門的な水準を満たす努力は欠かせません。そのうえで、自分の価値観や人生の軸そのものも変化していくものとして受け止めながら、「社会や組織の中で自分はどのように貢献できるか」を問い続けることが、長期的な成長の原動力になると感じています。
価値観や考え方は人それぞれ異なるので、与えられた役割を全うすることもひとつのスタイルです。ただ、もし誰かに与えられたテーマや役割ではなく「自分の価値観を軸に人生を歩みたい」のであれば、既存の枠組みにとらわれずに多様な視点に触れ、自分自身を問い直しながら専門性も磨き続けることで、自分らしいキャリアを築けるのではないでしょうか。
――とはいえ理想と現実の間には、迷いや不安が生まれることもあると思います。伊藤さんは、どのように向き合ってきましたか?
伊藤:私も日々、迷わないことはありません。なので、むしろ「今日の自分と、明日の自分は違っているかもしれない」という感覚で日々を過ごしています。最初から自分のことを理解していたわけではないし、今も分かったとは思っていません。

けれども、それでいいと思うんです。迷いや悩み、もやもやとした感情は、決してネガティブなものではなく、むしろ「その違和感に気づいた瞬間こそがスタート地点」だと考えています。
「はたらく」というテーマは、正解・不正解では語れない人生の問いに近いものがあります。ときに思いがけない選択肢が、ふと目の前に現れることもあると思います。だからこそ、迷いを抱えながらも、「いま何を感じているのか」に丁寧に向き合うことが大切だと感じます。
――自分を深く理解していくために、どのような行動が大切だと考えますか?
伊藤:過去を振り返りながら、人との出会いや対話が、改めて自分を見つめ直すヒントになることがあります。いつか振り返る日のためにも、まずは、自分がその時その瞬間に感じたことを、言葉や写真で記録することから始めてみるといいのかなと思います。
そういった自己内省と、他者との交流を重ねることで、少しずつ自分らしさの輪郭が浮かび上がってくる。その輪郭は、はっきりしていなくていいんです。
とはいえ、行動しないと何も動きだしません。まずは自分の感覚に耳を傾け、気づいたことを少しでも記録しながら、他者と語り、信頼できる人に話してみる――そんな行動の一つひとつが、自分を理解するための大切な一歩になります。
問いと余白から育まれる、信頼される事業づくりを目指して
――PERSOL MIRAIZでの、伊藤さんの役割を教えてください。
伊藤:PERSOL MIRAIZにおける私の役割は、生活者の課題やニーズを読み解き、新たな価値観やライフスタイルへと設計し直すこと、パーソルキャリアとしてそれをどのように位置づけるのか?というビジネスストーリーの構築だと考えています。
中でも大切にしているのは「本質的な問い」になっているのかどうか、です。たとえば「アウトカム」の捉え方。単なる数値的な成果指標ではなく、「誰の、何が、どのように変わるのか」という本質的な問いに置き換えて向き合うようにしています。
そうすることによって、例えば、機能の優先順位を検討する際も、ロジックだけで進めるのではなく、「ユーザーの実感や文脈にどのような影響を与えるか?」と問い直します。そうした思考を挟むことで、別の選択肢を導き出し、結果的に学習の定着や継続率といった成果に繋がることがありました。
問いを持ち続け、状況に応じて事業のあり方そのものを見直す姿勢が、作り手と使い手との間に静かな信頼関係を育んでいきます。例えば、東京の街に豊かな木や自然が育っていくように、事業、組織もしなやかに成熟していく――そう信じて、日々の事業づくりに向き合っています。
――伊藤さんの考え方や価値観を、どのようにチームに浸透させていますか?
伊藤:チームに文化を根付かせるには、仕組みよりも「余白」をつくることが大切だと考えています。正解を探すために「ユーザー重視」を掲げるのではなく、まずは使い手と共にあろうとするスタンスを持つことが大切です。
例えば、PERSOL MIRAIZでは、ユーザーさんから日常の出来事やエピソードを聞かせてもらう、「We love you❤️問いとアイデアの収穫祭」という取り組みを毎週実施しています。メンバーがそこで得た気づきを社内チャットで共有すると、他のメンバーから「私も同じことを感じた」といったような声が自然と返ってくるんです。

私は取り組みの名前を決めてチャンネルを開設しただけですが、「面白そう」「気になる」と感じた人が自発的に参加し、共感の声が広がり、今やチームの文化として根付いています。
事業づくりと同じようにチーム運営においても、自分の視点だけで完結せず、メンバーの言葉や問い、想像が自然と入り込めるような余地を設けることを意識しています。
――PERSOL MIRAIZの現在地と未来の展望を教えてください。
伊藤:ありがたいことに、今期から成果目標に対しても十分に達成した状態でQ1を締めくくることができました。先にお伝えした専門性をもったプロとしてしっかりやる部分と、自分を固定化せずにいる話と近しいですが、顧客価値と事業成果は二項対立ではないと思っているんですね。
少し贅沢かもしれないですけど、マーケティングやビジネスといった経済合理性の強い文脈と、そこに対して弱くなってしまうような個人のキャリアや一人ひとりに寄りそうような創造的な文脈は、共存可能だと思っているんです。
ただ、一方でdodaという大きなパーソルキャリアの屋台骨があればこそ、新規事業にチャレンジできることも事実です。ユーザーさんに愛してもらえるようなものにしていきながらも、パーソルキャリアとして、あるいは、事業収益性として、冷静に見極めることも誠実に考えていますね。
新規事業で不確実な状況下でもありますので、今の形で伸びていく未来もあれば、そうではない形に変えるほうが適切な未来もあると思います。
大切なのは、最終的にパーソルキャリア全体として、より「はたらいて、笑おう。」を実現できる状態であり、新規事業を預かる立場としても、目先の事業に固執しすぎずに、パーソルキャリア全体視点で柔軟に意思決定を行うことを目指しています。
「はたらく」を問うすべての人に届けたい、新しいキャリア支援のかたち
――伊藤さんは、どのような方に魅力を感じますか?
伊藤:自分の専門性に深く根ざしながらも、それだけにとどまらず、異なる領域や文化、人の価値観にも関心を持ち、柔軟に越境できる方には強く惹かれますね。
ただ、それ以上に大切なのは、「分からないこと」への向き合い方です。知らないことに臆するのではなく、たとえ知っていることであっても「本当にそうだろうか?」と問い直せる柔らかさが、新しい問いを生む余白になると考えています。
そして、その「分からなさ」にすらワクワクできるような、好奇心や探究心を持った方となら、きっと面白い未来をつくっていけると感じています。
――最後に、この記事を読んでいる方に、伝えたいメッセージはありますか?
伊藤:「これからどうしていけばいいんだろう」「このままでいいのかな」「ありたい姿に向けて学んでみたい」——そんな問いや違和感を抱えている方にこそ、PERSOL MIRAIZを届けたいと思っています。
PERSOL MIRAIZは、ただ学ぶだけの場所ではありません。自分を知り、仲間と語り合い学び合いながら、自己理解と自己実現のあいだを行き来できる「問いと創発の学びの場」になります。
たとえ今、明確な目標がなくても大丈夫です。名前のつかない未来に向けて、迷いながらも学びを通じて進んでいきたい――そんな気持ちを抱えるあなたに、きっと意味のある場になるはずです。
ぜひ、PERSOL MIRAIZでお会いできることを楽しみにしています。

――ありがとうございました!

伊藤 光生 Mitsuki Ito
カスタマープロダクト本部 はたらく未来図構想統括部 PERSOL_MIRAIZ部 ゼネラルマネジャー
事業やサービスの意義を問い直し、新しい価値を提供することを軸に活動。編集、プロダクトマネジメント、サービスデザインにおいて専門性を持ち、ビジネスとクリエイティブを越境しながら、「本質的な問いを立てること」を大切に事業や組織を育んでいる。新規事業における仮説検証、商品のコンセプト立案、体験設計、チームビルディングを得意とする。2023年にパーソルキャリアに参加。現在はPERSOL MIRAIZの事業責任者を務めている。
※2025年7月現在の情報です。
