「自分の仕事が、戦略のどこにつながっているか」が見える組織へ。データ・AIソリューション本部、OKR導入の現在地

多彩なデータ・AIの専門人材が集まるパーソルキャリアの「データ・AIソリューション本部」。大規模組織でありながら、メンバー一人ひとりが「自分の仕事が、組織のどこにつながっているのか」を実感し、迷いなく挑戦できる環境をどう作っているのか? その鍵となったのが、「OKR(Objectives and Key Results)」の導入でした。

そこで、本記事では、導入を主導した中村氏とokumura氏の2人に、OKR導入の舞台裏について語ってもらいました。

 

 

――まず、お二人の役割を教えてください。

okumura:本職は技術広報なのですが、2025年度下期から組織開発部にも所属していて、組織開発の業務にも携わっています。今回のOKRには、本部運営の立場で関わっています。

中村:私の本籍はクライアントプロダクト本部で、顧客体験戦略の策定と実行支援を主に担当しています。マネジャーとしても動きつつ、兼務先のデータ・AIソリューション本部で組織開発を担っていて、OKRの初期導入設計を担当しました。

 

――データ・AIソリューション本部は、どんな組織ですか。

中村:ミッションは「誰もが最高のキャリア機会を享受できるキャリアインフラを構築する」。エンジニア、PdM、DX推進担当、データサイエンティストなど、パーソルキャリアのデータ・AIの専門人材が集まる組織で、他本部と兼務しているメンバーが多いのも特徴ですね。

okumura:兼務が多いからこそ、「組織として同じ方向を向く」難しさもあって。そこがOKRの出発点にもつながっています。

OKRとは

――この先の話に入る前に。そもそもOKRって、ひと言で言うと何なのでしょうか。

中村:ざっくり言うと、「目指す山(目標)」と「登れているかを測る目印(指標)」をセットで決める目標管理の手法です。OKRは"Objectives and Key Results"の略で、O=Objective(達成したい状態・方向性)と、KR=Key Results(その達成度を測る具体的な指標)の二段構えになっています。ひとつのOに対して、KRを2〜4個ぶら下げるのが基本形ですね。

中村:Oは、ワクワクする・覚えていられるくらいシンプルな"旗"。数字じゃなくて方向を語る言葉です。一方でKRは、「達成した/していない」が誰が見ても判定できる数字にする。たとえばOが「ユーザーに選ばれるプロダクトになる」だとしたら、KRは「継続利用率を◯%に」「NPSを◯ポイント改善」みたいに、測れる形に落としていきます。

okumura:Oが"どこを目指すか"、KRが"そこに近づけているかのものさし"。この二つが揃って初めてOKR、という感じですよね。

 

――よく聞くKPIやMBOとは、何が違うのでしょうか。

中村:いくつかありますが、OKRらしさが出るのは「少し背伸びした野心的な目標を立てること」です。100%達成が前提ではなくて、70%くらい届けば上出来という発想なんです。だから安全に届く数字ではなく、ストレッチした"挑戦"を置きます。

okumura:「全部100点だったら、それは目標が低かったのかも」みたいな考え方ですね。「OKR=方向と挑戦」「KPI=進捗のメーター」「MBO=評価制度」です。

項目

OKR

KPI

MBO

位置づけ

目標管理フレームワーク

指標(メーター)

人事評価制度

目的

組織の方向を揃える・挑戦を促す

進捗を測る

個人成果を評価する

特徴

定性+定量(OKR

完全に定量

主に定量(+一部定性)

なぜOKRが必要だったのか

――導入前は、どんな状態だったのでしょうか。

中村:いわゆる「積み上げ型」で、目の前の業務を積み上げていく中で、組織としての方向性が散らばりやすい状態でした。裁量がない、というよりは、それぞれが良かれと思って進む先がバラけてしまう感じです。

okumura:「頑張ったのに、会社や本部が目指す方向とちょっとズレていた」というミスマッチも、実際に起きていました。これは個人の問題ではなくて、目線を揃える共通の仕組みがなかったということなんです。

 

――数ある手法の中で、なぜOKRを?

中村:理由はいくつかありますが一番は、上位の目標から個人まで"カスケード"でつなげられる——全社・本部の戦略と一人ひとりの仕事を一本の線で結べる点です。これにより、組織の目標と自分の目の前のタスクがつながり、組織への貢献実感を持つことができます。それ以外にも、KRにより組織の進捗具合が明確になったり、他チームが何を目指しているかが見えるようになり透明性があがったりするという点を理由に導入を決めました。先進企業での実績も後押しになりました。

"全社じゃなく本部独自"の意味

――本部独自で導入したのはなぜですか。

中村:会社として中期経営計画(=重点テーマ)はこれまでも定めてきたんです。しかし、それがメンバークラスまで十分に届き切っていなかった。「自分がやっている業務が、会社や本部の戦略のどこに関わっているのか」を、ちゃんと認識してもらいたかった。さらに、同じ方向を向いて前に進むためのモメンタムも、本部として醸成していきたいと考えていました。戦略に沿った活動をするために、独自でOKR導入をすることになりました。

 

――独自に進める中で、大変だったことはありますか?

中村:正直に言うと、「ミーティング(MTG)が増えた」という声はありました。OKR運用は振り返り会が必要になるので、通常より会議が増える側面はあります。

okumura:あとは、OKRが初めての人への理解浸透ですね。本部運営が大枠のルールだけ決めて、運用の細部は各組織にて決めていただく設計にしているので、そこの目線を合わせるのには今も試行錯誤しながら進めています。

変わったこと、そして運用の"壁"

――導入して、変わったことはありますか?

中村:一番は、透明性が上がったことだと思います。大規模組織だと「隣のチームが何をしているか分からない」が起きがちですが、OKRで各チームの目指すものが見えるようになった。そのうえで、本部としての"北極星"を定めて目線を合わせている。自分の仕事が戦略のどこにつながるかが、以前より見えるようになりました。OKR導入に関する本部メンバーのアンケート結果でも「目標が明確になった」「他部署が何をしているか見えるようになった」「振り返りやフィードバック機会が増えた」など、“見える化”と“方向性の共有”を評価する声が多数寄せられました。

 

――一方で、運用してみて見えた課題はありますか。

中村:たくさんあります(笑)。たとえば、KRがどうしても"アウトカム(成果)"でなく"アウトプット(タスク)"になりがち。そこで、OKR専用のAIエージェントを作りました。各チームが策定したOKRをエージェントに通すと、よりアウトカムな表現にアドバイスしてくれる。まだ浸透率には課題がありますが、"一人で悩まず壁打ちできる"状態を準備しているところです。

okumura:振り返り会が"報告会"になってしまう問題も、正直まだ現在進行形で試行錯誤中です。本部運営が全部の振り返り会に出るのは物理的に難しいので、各部に「現場担当者」を選任してもらって、本部運営の代わりにその人が振り返り会をアレンジする設計にしています。

 

――率直に「これは失敗だった」という運用はありましたか?

中村:最初の本部OKRを設計したときですね。本部 → 部 → グループとブレイクダウンしていくのですが、部のOKRを達成するにはグループのOKRがその要素を満たしていないといけないのに、"宙ぶらりんのOKR"ができてしまった。つながっていなかったんです。そこから、配下の組織までしっかりカスケードでつなぐために、策定用ボードで図解したり、番号を振ったりして、策定者が一目で関係を理解できるよう工夫しました。

okumura:失敗を隠さず、仕組みで直していく。この"直し続けられること"自体が、今の本部の強みだと思っています。

課題を踏まえた、これからの運営のありかた

――見えてきた課題に、これからどう向き合いますか。

okumura:大前提として、OKRは"入れて終わり"ではないと考えています。私たちもまだ2期目で、完成形じゃない。課題が見えること自体を、むしろ健全だと捉えています。

直近で力を入れたいのは、大きく3つです。

一つ目は、まずOKR策定そのものに慣れてもらうこと。初めての人にとっては、アウトカムで目標を立てること自体がハードルなので、OKR専用のAIエージェントなどを使いながら、「立てられる」状態を当たり前にしていきたいです。

中村:そこは設計側としても一番支えたいところですね。

okumura:二つ目は、振り返り会を、ただの進捗報告から"双方向でモメンタムが生まれる構成"に変えること。現場担当者という仕組みは作ったので、次は「部門を越えて学び合い、勢いが生まれる場」にどう育てるか。ここが組織の一体感を生むエンジンになると思っています。

三つ目は、カスケードの精査。これは一つ目とも紐づくのですが、会社の戦略から個人のミッションまでのつながりを、もっと一人ひとりに意識してもらうこと。個人のMBOとグループOKRの接続も、より自然にしていきたいですね。

 

――1年後、どうなっていたら成功と言えますか。

中村:入社歴が浅いメンバーも含め、誰もが「自分の仕事って、会社そして本部の重点テーマのここにつながってるんだ」とOKR運用を通して自然と認識できるようになっていたら、それでだいぶ成功といえると思います。あとは、課題が出ても現場で「こう直そう」ってなる空気ですかね。

okumura:完成形を目指すというより、こうやって直し続けられる状態がいいですよね。

中村:そうですね。まだ途中だからこそ、面白いのかもしれません。

okumura:たしかに。これからが楽しみです。少しずつ良くしていきたいと思います。

 

 

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中村 佳生

クライアントプロダクト本部 テクノロジー統括部 クライアント戦略デザイン部 ビジネス・組織デザイングループ マネジャー 兼 データ・AIソリューション本部 組織開発部 組織開発グループ

大学・大学院時代は工学部で経営工学・人間工学を専攻し、高齢者とロボットのインタラクションを研究。パーソルキャリアでのインターン体験をきっかけにサービスデザイン領域に出会い、2022年に新卒入社。現在はサービスデザイナーとして、複数の法人向けプロダクトを横断した戦略・体験設計や、AIを活用した新しいシステム基盤の構想などを担う。ビジネス・テクノロジー・クリエイティブの領域を越境し、組織の“隙間”をなめらかにつなぎながら、一人ひとりが尊重される「自己実現の器」としての組織・環境づくりを目指している。

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okumura

データ・AIソリューション本部 組織開発 Techリレーショングループ

大手総合広告代理店にて、企業のデジタルマーケティング領域におけるコンサルティング営業に従事。その後、通販業界にて新規顧客獲得に向けたWeb施策の企画・実行を推進。2018年11月にパーソルキャリアへ入社し、現在は技術広報と組織開発の両面から、組織づくりに取り組んでいる。

※2026年6月現在の情報です。