
2026年4月、パーソルキャリアは新体制へ移行しました。AIの進展に伴い、データ・AIソリューション本部とテクノロジー本部を軸に、個別最適から全体最適へと構造を転換しています。
現場の意思決定や開発はどう変わるのか。データ・AIソリューション本部 兼 テクノロジー本部 本部長 岡本旬平が、目指す組織像と施策の全体像を語ります。
- 個別最適から全体最適へ。AI時代に求められるIT組織とシステム構造の再設計
- 分断されたデータをつなぎ直し、全社で活かせるAIネイティブな基盤をつくる
- 複雑化したシステムと向き合い、技術負債をほどきながら持続可能な構造へ転換する
- 現場を起点に、意思決定と組織文化のあり方を変革していく
- 変化に適応する人材と組織を育て、キャリアオーナーシップを支える社会を実現する
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個別最適から全体最適へ。AI時代に求められるIT組織とシステム構造の再設計
――まずは、4月の新体制に至った背景として、これまでのIT組織のあり方にどのような課題を感じていたのか教えてください。

岡本:これまでパーソルキャリアでは、事業部ごとに最適化された形でITが存在しており、IT組織もそれぞれの事業に紐づく形で機能してきました。この構造は、事業のスピードを高めるうえでは合理的でした。
しかし、現在はAIの進展によって、IT戦略そのものが経営戦略になる時代です。従来の構造のままでは、AIを前提とした価値創出に対応できないため、ITとして機能する組織へ設計し直す必要があります。
ここで重要なのが、組織構造がそのままシステムに影響するという「コンウェイの法則」です。これまでのように個別最適な組織であれば、結果としてシステムも個別最適になります。そこで「逆コンウェイの法則(目指すべきシステム構造に合わせて組織を設計する手法)」に基づき、組織を再設計しました。
――目指すべき構造とは、具体的にどのようなものでしょうか?
岡本:今後は「二層分離」という考え方をベースに、システム全体を「安定させる領域」と「変え続ける領域」に分けて構築していきます。
街に例えると、道路や電気といったインフラに相当する基盤部分の「プラットフォーム層」は、長期的に変えにくい領域のため、安定的に維持していくことが求められます。一方で、その上に建つビルやテナントのように、サービスを提供する「アプリケーション層」は、時代や顧客ニーズに応じて柔軟に変化させていくべき領域です。
つまり、二層に分けて設計することで、プラットフォーム層は横断的に整備し、アプリケーション層は顧客最適を前提に柔軟に変化させられる構造にしていきます。
――そのような構造の実現に向けて、今回の新体制はどのように組織を再編したのでしょうか?
岡本:今回の新体制では、データ・AIソリューション本部とテクノロジー本部の双方が「プラットフォーム層」と「アプリケーション層」の両方を担い、二層構造に基づいた役割や責任範囲の整理を進めています。これは、先ほどお話しした「二層分離」の考え方を、そのまま組織運営にも適用しようという試みです。
システムと組織の構造を一致させることで、全社的な最適化を図りつつ、現場の各プロダクトがスピードを落とさずに価値を提供し続けられる状態へ転換していく。それが今回の再編の大きな狙いです。
分断されたデータをつなぎ直し、全社で活かせるAIネイティブな基盤をつくる
――新体制における、データ・AIソリューション本部が担う役割について、具体的に教えてください。

岡本:データ・AIソリューション本部のミッションは、データとAIを全社で利活用できる形に整備し、その前提となる基盤を構築していくことです。
そのためには、IT全体に対してAIネイティブを前提に再設計し、誰もがAIを制約なく活用できる状態にする必要があります。これは単なるツール導入ではなく、社員一人ひとりの意思決定や業務の進め方そのものを変え、生産性を引き上げるインフラとして捉えています。
AIが当たり前に存在する環境を整備し、個々の生産性を高めると同時に、それを使いこなすための知識やスキルも底上げしていくことが、データ・AIソリューション本部の大きな役割です。
――全社でデータを利活用するうえで、どのような構造的な課題があると捉えていますか?
岡本:これまで、事業成長を支えるために個別最適を積み重ねてきた結果、データが領域ごとに分断された状態になっています。
この状態では、個別には成立していても、全体として整合性のあるデータとして扱うことができません。特にAIはデータをもとに判断するため、前提となる意味や品質が揃っていない状態では、そもそも正しい判断が成立しません。
そのため、単にデータを集約するのではなく、全社共通の「言葉の定義(データ標準)」を作り直す必要があると考えています。
――こうした課題を解消するうえで、どのようなアプローチを取っているのでしょうか?
岡本:すべてのデータを個別に整理していく方法では、膨大な時間とコストがかかるため、データが整理されていく仕組みそのものを設計しています。
具体的には、データをプロダクトとして扱い、品質基準を明確にしたうえで、信頼できるデータのみが流通する状態をつくっていきます。これにより、データの意味や品質が揃い、全社で同じ前提に基づいた意思決定が可能になります。
複雑化したシステムと向き合い、技術負債をほどきながら持続可能な構造へ転換する
――テクノロジー本部の具体的なミッションについても教えてください。

岡本:テクノロジー本部の大きなミッションは、技術負債の解消です。データベースは共有されている一方、各サービスが独自に実装されているため、変更の影響範囲を正確に把握することが難しく、開発の多くの時間が影響調査に費やされています。
こうした構造的な問題を解消するために、モノリシックなシステムの分割や共通機能の整理に取り組んでいます。そのうえで、マイクロサービス化を進めながら、段階的に技術負債を解消していきます。
――これまで解決が難しかった背景には、どのような構造的な要因があったのでしょうか?
岡本:これまでは、共通領域を横断して取り組むための枠組みが十分に整備されておらず、業務プロセスの根幹に踏み込むような変革が難しかったのだと思います。
現在は、それらを明確に経営課題として位置づけ直し、経営層を巻き込みながら、全社として優先順位を定めて取り組む体制へと変えました。そのうえで、分散していた意思決定を一元化し、構造そのものを変える前提で動いています。
まだ取り組みの途上ではありますが、全体で構造や意義を共有しながら、この構造変革を着実に実現していきたいと考えています。
――岡本さんは、こうした構造的な課題をどのように見極めているのでしょうか?
岡本:問題の多くは、個別の開発や技術の選択ではなく、組織や意思決定の構造に起因しています。
そのため、まずはどこにボトルネックがあり、なぜその状態が生まれているのかを可視化することが重要です。そのうえで、関係者の認識を揃え、必要な意思決定と投資につなげていきます。
この一連のアプローチは特定の領域に限らず、どの組織でも通用する本質的なものです。構造的な問題を可視化し、認識を揃え、解決に向かっていく。このプロセスそのものが、規模が大きくなるほど重要性を増し、最終的には経営そのものに直結していくと考えています。
現場を起点に、意思決定と組織文化のあり方を変革していく
――ここまで構造や体制について伺ってきましたが、組織や人材の面ではどのような変化が求められていますか?

岡本:パーソルキャリアには、これまで事業ごとの個別最適を前提とした文化が根付いています。
個別最適は、それぞれの領域でスピードを出し、成果を積み上げるうえでは有効に機能してきました。一方で、全社としての最適化や構造的な変革に取り組もうとすると、意思決定が分散し、変革が進みにくい状態が生まれていました。
今回の変革では、こうした前提から抜け出し、全体最適を起点に意思決定できる状態へと転換していきます。そのためには、仕組みを整えるだけでなく、一人ひとりがどの視点で判断するのかというマインドセットも変える必要があります。
――マインドを転換していくために、組織と個人の方向性をどう揃えていくのでしょうか?
岡本:人が主体的に動くのは、組織のミッションに共感し、自分のやりたいことと組織の目指す方向が重なったときだと感じています。
ただ、組織の戦略が抽象的なままでは行動につながりません。本来、戦略は具体的な数値と結びつくものであり、どの水準まで達成することで、どのような価値を生み出すのかを明確にする必要があります。
さらに、その内容がメンバーにとって遠い目標のままでは、自分の役割や日々の行動に結びつけて考えることができません。戦略を各レイヤーにブレイクダウンし、個々の役割や意思決定と連続性を持たせることで、はじめて現場の行動に変換されていきます。
組織の戦略から個人の行動までが一貫してつながっている状態をつくることで、はじめて一人ひとりが自律的に動き、全体としての成果につながっていくと考えています。
――戦略と個人の行動をつなげるうえで、どのような取り組みが必要でしょうか?
岡本:手段として有効なのが、企業と個人の目標を連動させるOKRです。個人の取り組みが組織全体の目標にどのようにつながっているのかを可視化し、評価と連動させることで、日々の行動が自律的なものへと変わっていきます。
ただ、こうした仕組みも一方的に押し付けるだけでは機能しません。現場のメンバーが自分たちの取り組みとして捉えるためには、「内向きに閉じないこと」も重要だと考えています。
例えば、自分たちの学びや実践を外部へ発信(登壇や記事執筆など)する動きです。外の視点に触れることで、自分たちの強みや課題が客観的に浮き彫りになり、それが組織への還元や個人の成長加速につながります。
こうした発信を個人のモチベーションに委ねるだけでなく、評価指標の一つとして適切に定義することで、戦略的な挑戦を組織として正当にバックアップする体制を構築していきます。
変化に適応する人材と組織を育て、キャリアオーナーシップを支える社会を実現する
――これからの時代に価値を発揮できるのは、どのような人材だと考えますか?

岡本:これからの時代は不確実性が高く、将来を正確に予測することは難しいと考えています。
だからこそ、変化を前提に今何が求められているのかを考え、主体的に動き続けられるかどうかが重要です。また、未知の領域にも踏み出しながら、自分自身のスキルや価値を継続的に更新していける姿勢も欠かせません。
変化の激しい中でも走り続けられる人材を育成し、同時に外部からも迎え入れることで、どのような環境変化にも適応し続けられる組織へと成長していきたいと思います。
――現在のデータ・AIソリューション本部では、どのような成長機会や環境がありますか?
岡本:データ・AIソリューション本部は、AIネイティブな企業へと変革していくことをミッションとしています。データとAIの力を活用し、事業や企業価値の向上に直結するテーマに取り組んでおり、価値創出まで一気通貫で関われる環境です。
現在は、データやAIの領域において高い専門性を持つメンバーが集まっており、モデル開発まで担える人材も在籍しているため、実際の事業課題に対してどのように適用し、価値に転換していくのかという視点で学び続けられます。
最先端の技術を活用しながら、AIネイティブな企業へと変革していく。この挑戦の中で、自ら価値を生み出す経験を積みながら、専門性を広げていける環境です。
――テクノロジー本部では、どのような経験が得られるのでしょうか?
岡本:テクノロジー本部は、マイクロサービス化やアーキテクチャの再設計に加え、AIの統合を見据えたシステム刷新など、難易度の高いテーマに同時に取り組んでいます。そのため、大規模なプロジェクトが多く、技術的な挑戦機会も豊富にあります。
また、技術だけに閉じるのではなく、事業と密接に連動しながら価値創出まで一気通貫で関われる点も大きな特長です。
技術と事業の両面から価値創出に関わりながら、技術負債の解消やAIネイティブなシステムへの転換といった大きな変革に挑戦できる環境だと考えています。
――最後に、変革の先に、社会へどのような価値を提供できると考えているか教えてください。
岡本:現在は人によるキャリア支援に大きく依存していますが、データとAIを活用することで、これまで蓄積されてきた知見を再現性のある形に変換し、安定的に届けられるようになります。
その結果、パーソルキャリアが掲げるキャリアオーナーシップの実現においても、人にしか担えない判断や伴走の価値を活かしながら、より多くの人に継続的なキャリア支援が可能になります。
単に選択肢を提示するのではなく、意思決定と行動の両方を継続的に支えられる基盤をつくることで、一人ひとりが長期的にパフォーマンスを発揮できる社会を実現していきたいと考えています。
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岡本 旬平 Jumpei Okamoto
データ・AIソリューション本部 / テクノロジー本部 本部長
エンジニアからキャリアをスタートし、製品開発・プロセス設計・コスト管理まで一貫して担った経験を経て、コンシューマー事業・HRテック・MaaSなど幅広い領域で事業成長を実現。
現在はパーソルキャリアのデータ・AIソリューション本部、テクノロジー本部の本部長として、生成AI活用基盤、データファブリック、データガバナンス、マイクロサービス化などテクノロジーと事業戦略を統合し、AIとデータ活用による企業変革に従事。
※2026年4月現在の情報です。
