技術顧問を歴任した岡本に訊く――エンジニアリング組織の考え方

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数々のIT関連サービスの立ち上げや技術統括の立場に携わり、また複数社の技術顧問も歴任してきた岡本邦宏が、2020年7月 パーソルキャリアにジョイン。サービス開発統括部 エグゼクティブマネジャーとして、カルチャーデックの作成をはじめとした組織の文化づくりや、内製開発の推進に力を注いでいます。

彼はキャリアの中でなぜ人材業界、そしてパーソルキャリアを選び、この場所で何を成し遂げようとしているのか。入社して8ヶ月が経つ今の視点から、彼のキャリアと組織のあり方に対する考え方を聞きました。

レガシーな商慣習にテクノロジーを掛け合わせ、人材業界を「人材産業」へ

――まずは、ご経歴から教えてください。エンジニアとしてのキャリアは、どのようにスタートしたのでしょうか?

岡本:エンジニアとしてのキャリアのスタートは、国内の通信事業会社でシステム開発やシステム営業をしていた頃に遡ります。英語が話せないにもかかわらず、従業員の半数が外国人であり、また業務でも英語が用いられるという環境に身を置き、グローバルな考え方やエンジニアリングを学んでいました。今でもシステムの接続や交渉を得意としていますが、その源泉はこの経験にあると思っています。

その後、英語が話せないことに危機感を覚え、永住権を取ることを目的にオーストラリアへ語学留学にいきました。国土が広いオーストラリアでは、天然資源は潤っているもののITが進んでおらず、インターネットなどは日本よりも15年くらい遅れていて。例えば観光事業では、多くの留学生や観光客との対応の中で、予約管理を全て紙で行っているような状態だったのです。当時はお金がなかったので、そうした国情を鍵に顧客管理システムを作っては売り歩いていました。

 

――キャリアのスタート時から、グローバルを意識していたんですね。渡豪された当時は、システム開発の先で事業を興そうというお考えはなかったのですか?

岡本:いずれは事業を興すこともゴールとして見据えていましたが、自分で事業をするためには永住ビザが必要になります。当時は、まずその一段階手前でビジネスサポートをしてもらうことを目的に、生活するためのお金を作っていました。

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その後、現地の旅行・留学の会社でプロダクト開発と広告事業の立ち上げを行って分社化し、やがて事業を売却して帰国しました。日本に戻ってからは、通信事業会社やコンテンツプロバイダで事業をメインにキャリアを重ね、新規サービスの立ち上げや技術統括、CTOなどの役割をさまざまな事業で経験した後、2020年7月にパーソルキャリアに入社しました。

 

――ファーストキャリアの時点で、「事業家として生きていく」という感覚をお持ちだったのでしょうか。

岡本:そうですね。エンジニアとして生きていくのではなく、事業家として生きていくためにエンジニアリングが必要、という感覚です。エンジニアリングはあくまで手段ですから、50代になってもプログラムを書いているというイメージはありませんでした。事業をどのように作って、人々にどのように使ってもらうのか、という視点を持って歩んできたキャリアだと思っています。

 

――数々の事業に携わってきた岡本さんが考える、「事業を作るときに必要なこと」を教えてください。

岡本:巻き込み力だと思います。発想の光る「天才」と言われる人は学生の起業家をはじめたくさんいますが、そのアイデアに周りを巻き込んで拡大できる人はそう多くはありません。

例えば、システムや事業の詳細を考えるにしても、商流、平たく言えば「お金の出どころ」を考えて、その人々に納得してもらえるようなシステム構築や事業設計をしていく必要がありますよね。ここでは、いかに巻き込んで腹落ちさせられるか、が大切な要素になると考えます。

 

――幅広く事業経験を積まれた岡本さんが今回パーソルキャリアにJOINされたのは、描かれていたキャリアパスの1ステップなのでしょうか。

岡本:当時描いていたのは、さまざまな事業を新たに作って成長させ、バイアウトして早く引退すること。それは今も思っていることです。(笑)

ではなぜパーソルキャリアに入社したのか、というと……客観的に見た際に人材業界は、古い商慣習が色濃く根付いた業界のように思います。そういったレガシーな業界である分、DXを実現することの経済効果やシェアを取れる可能性、そして世の中を巻き込む影響力も大きいのではないかと思ったんですよね。もちろん商慣習が根深いほど大変なことも多いですが、それを成し遂げた時に私自身のキャリアにとっても得られるものが大きいと思えたので、人材業界でやってみようと決めました。

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中でもパーソルキャリアを選んだのは、お声がけをいただいたというのが正直一番のきっかけですが、「テクノロジーを使って事業を生み出し、産業の変革をリードしていく立場」にあるなと明確に思えたことが、重要な決め手です。

もちろん、ブランディングなどより良くできる部分があるとも思いますが、出来上がった組織はつまらないですし、私が入る意義がなくなってしまいますから。まだまだやれることがあるなと可能性を感じています。

 

――岡本さんご自身で事業を立ち上げ、人を巻き込むこともできる中、それでも組織と組むことを選んだ理由を教えてください。

岡本:既存産業で商慣習が根深いところには、スタートアップが参入しにくいという点があります。もちろん一人でやったり仲間とやったりしてもいいのですが、会社を作ることは簡単でも、それを10年、20年と続けていくのは難しいだろうと認識しています。

また事業家はたくさんいますが、「産業」を興せる人はなかなかいません。パーソルキャリアが「産業家」として人材業界を「人材産業」にしていけたら、という思いもありますね。

 

組織体制やマインドの変化が、既存サービス × 新規サービスによる新たな価値提供の鍵

――ここからは、組織のお話を伺っていきます。まずは管掌するエンジニアリング統括部の課題を教えてください。

岡本:そうですね。エンジニアのキャリアパスや採用している技術バックグラウンドが、各部署内で完結してしまっていることが課題です。例えば技術の面では、第2開発部ではサーバーレスアーキテクチャやGCPを採用していたり、また言語選定やフレームワークもどちらかというとフロント寄りのものになっていたりします。一方「doda」や「iX」を担当する部署の場合は、リフト&シフトを進めているとはいえオンプレのものやAWSもありますし、言語もJavaがメインになっています。

今後、新規サービスを既存のビジネスと接続したり、またサービス同士を掛け合わせてプロダクトを生み出したりする可能性も考えられるので、この技術バックグラウンドの相違が障壁になるはずなので、手を打っていかなければいけません。

また我々は、サービス開発に求められるスピードやテクノロジーの進化のスピードに応えるべく「開発の内製化」を推進する組織として存在していますが、現段階ではパーソルキャリアの開発全体の内製化には至れていません。第2開発部内では内製ができていますが、それだけでは意味がないので、存在意義を考えながら視野を広げる必要があります。

 

――そういった課題の解決のために、どのようなアプローチが必要だとお考えですか?

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岡本:コロナ禍にあってコミュニケーションコストは高くなりますが、まずは情報共有が大切だと思います。またエンジニアのキャリアや技術が、部署内で閉じないようにしていくことも欠かせないでしょう。

そのためにも横の異動やジョブチェンジを設けたり、あとはエンジニアの循環施策を活用したり。生産性は絶対に落ちるので痛みは伴いますが、中長期的にみた時に組織として向上するという目線合わせが必要です。

サービスの接続は将来的な話であっても、部署に閉じられている知見を他の組織にもきちんと循環させる、という準備を先駆けてやっておくことで、会社として一歩前進できるのではないでしょうか。

 

――多様なバックグラウンドをもつエンジニアがいることが、パーソルキャリアの強みであり可能性ではありますが、ここからは一歩進んで「その多様なエンジニアの力をどのように結集して発揮させるのか」を考えていかなければいけないのですね。

岡本:そうですね。加えて、スピード感にも危機感を感じる部分があります。先の話の通り人材業界にはチャンスがありますし、またせっかく優秀なエンジニアが揃っているので、決断や承認のスピードを高めていかなければいけません。そのために大切なのは、各専門分野に責任を持って前に進められる、最終意思決定者がいることだと思っています。

現在は、dodaや新規サービス、データ活用……と事業ドメインやシステム別などさまざまな単位で部署が分かれていて、その場その場で承認を得るべき人が誰なのか、判断しづらい状況です。ですが、これらの判断は包括的に見れば全て「技術のこと」ですから、そこに最終決定を下すことができる専門家がいれば、責任の所在が明確になるので依頼もしやすくスムーズになるはず。また、その責任者が全体を俯瞰して意思決定をしたり、経営と接続したりしていくことで、先ほどお話したようなサービスや部署の融合が前に進んでいくのでは、とも思います。

 

――これまでは各部署内で「テクノロジーで、サービスをより良くする / 新規サービスを開発する」ために最適な判断をしてやってきたけれど、次のステップへ向けてさらに前進するためには、これからまた新たなやり方が求められる、ということなのでしょうか。 

岡本:そうですね。新規サービスと既存のサービスを融合させるには、各部署の技術的な融合やスピード感が課題としてあり、それらを乗り越えて新たに価値提供ができる事業を確立するには、各領域の最終意思決定者の存在や経営のマインドチェンジといった「変化」が鍵になるのだと思っています。

 

文化は、作るのも壊れるのも簡単--いかに対話をして相互理解を築けるか

――岡本さんは、組織が発展する中で管理職の立場としてJOINする機会も多いと思いますが、そうした場面で心がけていることはありますか?

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岡本:自分の環境は自分で作ることをモットーにしています。ただこれは、やり方次第ではわがままになり得るので配慮が必要です。現在は特に「これまで三口さんが築いてこられた組織文化を踏襲しながら、いかに自分の文化を作るか」に留意しながら文化づくりを進めています。

また管理職の立場をさまざま経験していても、会社ごとに成り立ちやビジネスモデル、そして文化は異なります。それらを理解した上で発言できるかどうかも、重要なポイントだと思います。例えば、生産性の向上が見込めるSaaSは数多くありますが、それをパーソルキャリアの部署すべてに強引に導入すれば良いかというと、そうではありませんよね。最前線で利益を出して事業を支えてくれているのは現場の営業メンバーなので、彼らにテクノロジーを理解してもらわなければ、ツールを導入〜定着させ生産性向上の結果を見るところまで辿り着くのは難しくなります。

文化を作ることは簡単ですが、壊れるのも簡単ですから。いかに対話をして腹落ちさせられるかが大切なのです。

 

――商流を理解した構築や設計が欠かせないという点で、冒頭にお話いただいた「巻き込み力」がここでも重要になるのですね。

岡本:そうです。僕の考えでは、サービスを作るのであれば、「どのように売ってどのように使ってもらうのか」までシナリオを描かなければいけませんし、業務システムを一つ導入するのであれば、何か一つを手放す覚悟で現場のタスクと負荷を考えた提案をしていく必要があるのです。 

ただ難しいのは、変革の必要性を会社全体が理解をして、技術サイドから価値発揮していくことは、険しい道のりになると思っています。それは、会社が適切に前進するだけの売上がきちんと立てられているので、変革の必要性を感じにくいんですよね。

 

――「テクノロジーの意義」と「今変革に乗り出す意義」の両軸で、理解を得ていかなければいけないということですね。その中で、岡本さんの役割としてやるべきことをどのように認識されていますか?

岡本:このまま、営業やサービス開発をマンパワーで回していくことはきっと不可能ではないけれど、それでは何も変わっていきません。10年後まで同じ状態に留まるのではなく、この5年間で痛みも味わいながら挑戦する。それによって見えてくる景色を理解してもらうために、巻き込み力を発揮していかなければ、という思いがあります。

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そしてメインミッションは、次の事業の軸になるプロダクトを開発することと、内製化を推進すること。そのためには、繰り返しになりますがスピード感が重要なので、現場の人たちとの相互理解を築き、大きな意味で「ONE TEAM」になれるように頑張っていきたいと思っています。

約6,000人規模の会社でここまで代表との距離が近く、対話できるところはそうないと思いますし、DX推進の可能性を感じているので、ここでスタックしていてはもったいないですからね。

 

――岡本さんがJOINしたエンジニアリング統括部が、スピード感のあるものづくりと文化づくりを推し進める、その先の5年後、10年後にパーソルキャリア、ひいては人材業界がどうなっているのか楽しみですね。

岡本:ただものづくりはあくまで手段で、ユーザーに使ってもらって最高の体験を提供できるかどうかが大切なので、自己満足にならないように。それを忘れず、新しいサービス作りにこれからもチャレンジし続けていきたいと思います。

――素敵なお話をありがとうございました!

(取材=伊藤秋廣(エーアイプロダクション)/文=永田遥奈)

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岡本 邦宏 Kunihiro Okamoto

エンジニアリング統括部 エグゼクティブマネジャー

ADSL通信事業社にてシステム開発に従事したのち渡豪し、旅行・留学の会社にてプロダクト開発および広告事業を立ち上げ分社化。事業を売却し帰国。SoftbankグループではBBTV/ BBラジオなどのBBシリーズのリードエンジニアとして新規事業立ち上げを行う。CYBIRDにて複数のモバイルコンテンツ事業責任者兼シニアエンジニアリングマネージャーとして子会社のCTOを務める。レコチョクにて、定額制音楽配信サービスDヒッツを立ち上げ。数百億円以上を売り上げるサービスへの成長に寄与する。その後、ヘルスケアスタートアップの取締役CTO、スキルシェアサービスのココナラでは技術統括を努め、Rails移行のPDMやVPofEの役割も担う。音声ベンチャー、不動産テックなど複数社の技術顧問などを担い、現在に至る。

※2021年4月現在の情報です。

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